実質賃金低下の逆風はなお止まず:2023年10-12月期国内GDP統計発表へ
2023年の日本経済は「前高後低」:2024年の成長率は大幅低下へ
2023暦年の日本の実質GDPは、前年比+2.0%と高めとなったと見込まれる。しかし、これは主に年前半の高成長によるものであり、年後半には息切れ感が広がった。年前半に成長率を大きく押し上げたインバウンド需要による成長率押し上げ効果が、年後半には弱まっていったことが主な要因だ。それに加えて、物価高、実質賃金下落による個人消費への逆風が、年後半の成長ペースを落とした。 このように成長モメンタムを落とした状態で2024年の日本経済は始まっており、年初には能登半島地震によるマイナス効果も生じた。 政府は昨年11月に決定した総合経済対策で、給付金と定額減税の実施を決めた。定額減税については今年6月頃に実施予定だ。減税・給付の総額は5.1兆円程度でGDP押し上げ効果は+0.19%と推定される。一時的な給付金と減税は貯蓄に回る割合が高くなり、景気浮揚効果は限定的だ(コラム「大枠が固まる総合経済対策。GDP押し上げ効果は減税・給付金で+0.19%、対策全体で+1.2%と試算:減税・給付金に大義はあるか」、2023年11月2日)。 さらに、春闘の後には、家計の間で期待したほどの賃金上昇率とはならず、実質賃金の下落がなお長く続くとの見方が広がることで、個人消費が一段と下振れる可能性がある。 実質賃金の低下、限定的な経済対策の効果、海外成長率の軟化などが2024年の成長率の下振れ要因となり、2024暦年の実質GDP成長率は+0.6%と2023暦年の+2.0%から3分の1以下へと大きく下振れることが予想される。 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
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