中村悠一、緩急を生む“声芝居の妙” 『逃げ上手の若君』諏訪頼重は早くもハマり役に
キャラクターに“リアリティ”を持たせる中村悠一の息遣い
アニメが放送される前の段階ではギャグの流れの中で、頼重のシリアスな一面が浮いてしまう可能性を心配していたが、中村はコミカルな場面ではとことん振り切り、シリアスな場面では頼重の内面や人柄をじっくりと描き出し、キャラクターの輪郭を描き出す。中村は現人神として崇拝される対象としての頼重と、人間臭い頼重を上手に演じ分けていた。 第四回では、鎌倉奪還のため稽古に勤しむ時行と頼重の前に、新たに信濃守護に任じられた武将・小笠原貞宗がやってくる。そこで頼重は「絶対に正体を悟られないこと」「弓の技術を盗むこと」という目的を達成させるべく、時行は当時のメジャースポーツである犬追物で貞宗と対決することになった。貞宗の弓を喉元に突きつけられてもなお、動じずに淡々と語るポーカーフェイスぶりを発揮したかと思えば、妙案を思いつた頼重は「心躍らぬ時行様ではありますまい!」と意気揚々と話し始める。中村が演じる頼重はキャラクターの息遣いがダイレクトに伝わってきて、まるで目の前にいるかのようなリアリティを感じさせる。 早くも覇権アニメとして名前が上がっている『逃げ上手の若君』。まだ第一回の放送から1ヶ月しか立っていないが、中村の頼重はすでにハマり役となりそうな予感がしている。中村演じる頼重がこの先どのような表情を見せてくれるのか。時行の成長譚とともに、密かな楽しみになっている。
川崎龍也