国民・玉木雄一郎はなぜいま叩かれる?「手取りを増やす」がぶち破るべき本質的な「130万円の壁」とは
■ 実は実質的に解消している「103万円の壁」 実際には、これらの手取りを増やす政策については、共産党もそれっぽいことは過去言い続けていて、いわゆる「年収の壁」に関して所得控除も含めたアイデアは打ち出していた時期もありました。 ところが、共産党は支持層の高齢化とともに、これらの働く世代の利害にかかわる政策よりも、どちらかというと原子力発電所や消費税への反対といったイデオロギー色の強い政策主張に拘泥していて、その結果、党勢において不可逆なほど支持層が高齢者ばかりになり衰亡が止まらないという危機的状況になっています。 他方で、すでに書いた通り国民民主党は勤労世帯への実質的な所得増(可処分所得増)を掲げており、それをネット中心にブチ撒けたため、既存政党の「高齢者も、勤労層も」「都市部も、地方も」という玉虫色の主張では響かない、いま困っている若者層や勤労・子育て層にヒットしたと言えます。 玉木雄一郎さんが党首討論のパネルでも「子育て世帯のために手取りを増やす」や「若者をつぶすな(手取りを増やす)」とメッセージを送り続けてきたのも特徴的です。 ただ、現状で問題となっている「103万円の壁」は、もともとが約30年ほど前の1987年(昭和62年)に策定された所得控除の金額であって、当時の東京都の最低賃金は611円であった時期に策定されたものです。 実は、2017年(平成29年)税制改正大綱において、それまでの配偶者控除と問題点が整理され、実際には配偶者の収入が103万円を超えても世帯の手取りが逆転しない仕組みとなっており、税制上の103万円の壁は解消しています。 ◎配偶者控除について(財務省主計局 2022年) つまり、実は税法上は103万円の壁は2017年に実質的に解消され、103万円の壁を超えて所得税を払うことになるのだとしても、手取り額は増えるので壁など気にせず働いていいのです。 しかし、103万円の壁が取り払われ、また社会保険料の支払いが発生する106万円を超えても、制度への理解のなさからいまでも「働き控え」をする人たちが少なくないという現実は、いまだに残っています。わずかでも社会保険料が発生すれば、働く人だけでなく雇う企業の側もこうした従業員の半額を企業側が負担しなければならないことで忌避感があるのでしょうか。 雇う側からすると、パートさんやアルバイトの皆さんを雇用したときに発生する社会保険料の支払いが非常にだるいという状況はあるわけですね。 そもそも、103万円の壁と言っても、103万円以上稼いだ額にだけ税金がかかるわけですから、1万円多い104万円の収入がある人の所得税は500円ほどです。また、配偶者の所得控除も150万円ですから、実際には所得税がどうかというよりも社会保険料が発生する壁のほうが国民の手取りには直接響くことになるのです。 ただ、所得控除を超えて給料が増えたとしても、それは103万円を「超えた分だけ」に税がかかるんだという大原則があまり知られていなかったのは問題です。裏を返すと、103万円の壁はすでに解消しているのに国民民主党の主張に乗っかった人は、税の仕組みを誤解しているか、なんとなくそういうものなんだろうと騒いでいるかにすぎない面はあります。