国民・玉木雄一郎はなぜいま叩かれる?「手取りを増やす」がぶち破るべき本質的な「130万円の壁」とは
(山本一郎:財団法人情報法制研究所 事務局次長・上席研究員) ■ 総裁選直後に送った玉木さんへの赤面メッセージ 【図版】「103万円の壁」よりもどうにかしなければならない国民年金加入の「130万円の壁」。国民民主党も分かっているはずだが、あえて言及していない 自由民主党総裁選が終わって一息ついたころ、早期の解散総選挙を見込まれるなか、7議席だった国民民主党の玉木雄一郎さんに「11議席目指して頑張ってください」などという激励メッセージをお送りしていて私も恥ずかしさに顔真っ赤なんですが……。いまやモテ期真っ盛りの、国民民主党の今回の躍進を確信もって予想できた人はおられたでしょうか。 振り返れば、国民民主党の支持動向は基本的に無党派層からの批判を受けた自由民主党・石破茂政権への批判票だけでなく、党内のゴタゴタや大阪万博の不人気、そして兵庫県知事・斎藤元彦さんの辞任するしないのすったもんだですっかり見放された日本維新の会・馬場伸幸体制への失望の結果、比例だけでなく選挙区でも「第三極」としての国民民主党に票が流れたという図式になっています。 それまでは、各種調査でも政党支持率では長らく1%から2%程度に低迷していた国民民主党が、いわば自民党批判だけでなく、既存政党への批判票の受け皿となって飛躍するなんてことは考えられてもいなかったところだと思うんですよね。あまり政治に関心のない有権者からすれば、あまり知られていなかった政党だったわけですから。 とりわけ、都市部の投票動向において、勤労世帯の30代以下から得票1位に躍り出ることは誰も想定していなかったわけで、それだけ国民民主党が主張した「手取りを増やす」というスローガンがX(Twitter)、Instagram、TikTok、YouTubeなどでウケたとも言えます。 なにより、国民民主党のキーマンの皆さんが明るいキャラクターで、それがウェブ受けするのは間違いないんですよね。見ていて面白いから映えるというのは大事です。 もちろん、一部政治評論家が事前から述べていた通り、国民民主党のこれらの政策主張自体がファンタジーであり、れいわ新選組や参政党などと変わらないポピュリズム的性格を持っていると指摘されるのも致し方のない面はあります。 簡単に「手取りを増やす」といっても、ある側面ではばら撒きにすぎず、財源のアテのない非現実的な政策で無責任に選挙戦を戦っていると酷評されるのは、一面でまあまあ事実とも言えます。 しかしながら、今回、立憲民主党が執行部・野田佳彦さんの判断で「政治とカネ」の争点に特化し、腐敗しきった自由民主党の政治を終わらせることを選挙戦の主なテーマにし、与党批判の文脈で戦い抜くという判断を下したため、国民民主党が唱えるような政策本位の主張は脇に置かれました。 いわば、国民の生活をどのように守るのか、という具体的な政策面での論点が置き去りにされたのです。とりわけ物価高と賃金の関係は、勤労世帯からすれば伝統的な争点である「景気・雇用」のど真ん中のイシューです。 裏を返せば、「年金・社会保障」という大きな問題や、能登半島地震・洪水など災害対策、成長戦略とリスキリング、人口減少を伴う地方経済の崩壊など、各方面の重要政策については、今回の解散総選挙では野党サイドからはあまり多くは論じられてこなかったというのが実態ではないかと思います。 そこに、政策本位の旗頭で、代表・玉木雄一郎さんが主張してきた政策はどうであれ有権者に刺さり、しっかりと得票に結び付き、声望を失った維新票を見事に喰って28議席を確保というのは鮮烈です。 この国民民主党の躍進に焦ったのは日本共産党など伝統的な政策を掲げる既存政党の皆さんです。