日本で「自分の気に入らないことに耐性のない人々」が増えている「ほんとうの理由」
「世の中あなた一人のために回ってるわけじゃないんだよ!」
私は別に裁判という方法が悪いといっているわけではない。ただ、紛争の解決方法には多様なものがあるのだから、法的に白黒つける裁判が万能だ、すべてだと考えるべきではないのではないか、と問いたいのである。 事実、日本では離婚については裁判よりも協議という方法が使われているし、紛争の性質如何によっては示談、仲裁や和解といった方法のほうが相応しいとされている。もっというと、法的に白黒をつけ、誰かに法的責任を押しつけるやり方ではない解決法もどんどん発見され、使われていけばよい。 法化の暗い面について早くから警鐘を鳴らしていたドイツの社会哲学者ユルゲン・ハーバーマス(1929─)は、法の世界は社会を形成するさまざまなシステムのたった一つでしかないが、それが現代において血の通う人間関係を徐々に侵食し、結果として友情、我慢、信頼、互譲という要素が失われている、と指摘している。 法化がもたらす最大の弊害は、人々が法律を盾にして他者と対立的に関わることしかできない世の中を作り出すことだろう。 ハンバーガー店のコーヒーが熱くてやけどをしたから訴えるとか、番組で外来語を多用するのが精神的に苦痛だからTV局を訴えるとか、「世の中あなた一人のために回ってるわけじゃないんだよ!」と言いたくなるような、自分の気に入らないことに耐性のない人々が増えているように思えるが、その原因の一つに法化があるのではないだろうか。 さらに連載記事<海外のカジノで賭博をしても捕まらないのに、日本だと逮捕される「驚愕の理由」>では、私たちの常識を根本から疑う方法を解説しています。ぜひご覧ください。
住吉 雅美