「私たちが問われている」「被爆体験、世界の記憶に」「全ての人に、平和な日常を」 後を継ぐ世代やウクライナ避難者が語る、自分たちがやるべきこと【私の視点 ノーベル平和賞】
2024年のノーベル平和賞が日本原水爆被害者団体協議会(被団協)に授与される。 さまざまな立場の人に、受賞の意義を聞いた。(共同通信=黒木和磨、兼次亜衣子) 【写真】原爆のきのこ雲の下で起きた惨状… 激しく血を流して全身に激痛 友人は「おまえ良かったね」と言い残して息を引き取った… 「胸が張り裂けそう」被爆者との出会いが双子のアメリカ人姉妹を変えた
▽「日本の政策も前進を」核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)国際運営委員の川崎哲さん(56) 近年、核兵器が軽々しく語られていると感じる。米議員がパレスチナ自治区ガザに原爆投下を促すような発言をしたり、石破茂首相が就任前に米国の核を日本で運用する「核共有」に言及したりしている。核がどういうものか分かっているのか。被爆者が語ってきた壮絶な体験から気付き直さなければいけない。 長らくノーベル平和賞候補として挙げられていた被団協への授賞は遅すぎたぐらいだが、その意義は、世界で核使用の恐れが高まる現状を止め、核廃絶へ向かうことにある。私たち後を継ぐ世代がどう行動するかが問われている。 受賞決定後、石破首相が、核兵器を全面的に違法とする核兵器禁止条約へのオブザーバー参加を「真剣に考える」としたのは前向きなサインだ。市民の声が高まれば、政府がかじを切る可能性はある。受賞を受けても日本の政策が一歩も前進しないようでは恥ずかしい。 ▽受賞が追い風、核廃絶が口にされ始めた
核の存在で戦争や核使用を防ぐという抑止論は極めて脆弱(ぜいじゃく)なものだ。核保有国のロシアはウクライナに侵攻して使用を示唆しているし、イスラム組織ハマスは事実上の保有国イスラエルを攻撃した。2001年の米中枢同時テロも防げなかった。政治的理由があれば戦争は起きる。 被団協事務局次長の和田征子(わだ・まさこ)さんが「私たちがやってきたことこそ抑止力だ」と語ったが、名言だ。被爆者はつらい記憶を思い出し、体にむちを打って本当にしんどい思いをして証言を重ねてきた。核が使われたら大変なことになると認識することが人々の理性を働かせる力になる。 受賞が追い風になり、世界の政府高官や社会的に影響力のある方々が被爆者や核廃絶について口にし始めた。12月の授賞式の様子は世界中に伝えられる。被爆80年の来年にかけては、全世界で核の危険性を真剣に考える期間になると思う。 × × かわさき・あきら 1968年、東京都生まれ。NGO「ピースボート」共同代表。国際運営委員を務めるICANは2017年にノーベル平和賞受賞。 ▽「“被爆展示はグロテスク”にショック」核廃絶を目指す一般社団法人「かたわら」代表理事の高橋悠太さん(24)