日本人が知らない、米軍は多くの日本兵の遺体を「滑走路下」に埋めたのか「遺骨の実態」
なぜ日本兵1万人が消えたままなのか、硫黄島で何が起きていたのか。 民間人の上陸が原則禁止された硫黄島に4度上陸し、日米の機密文書も徹底調査したノンフィクション『硫黄島上陸 友軍ハ地下ニ在リ』が13刷ベストセラーとなっている。 【写真】日本兵1万人が行方不明、「硫黄島の驚きの光景…」 ふだん本を読まない人にも届き、「イッキ読みした」「熱意に胸打たれた」「泣いた」という読者の声も多く寄せられている。
注目の「地下壕マルイチ」へ
広さが東京都板橋区とほぼ同じ硫黄島。1952年度から半世紀以上、政府による遺骨収集事業が続けられているが、なぜ2万人のうち1万人の遺骨が見つからないのか。 「滑走路の下に埋まっているからだ」 戦没者遺族の間では長年そうささやかれてきた。自衛隊や米軍機の発着を理由に、滑走路のある地区のみ調査が手つかずだった経過が背景にある。 現在の滑走路は全長2650メートル、幅60メートル。米軍が戦闘中に、重機で一帯に土砂を盛って平地にし、コンクリートで地面を覆い、造成した。硫黄島を含む小笠原諸島の施政権が1968年に日本に返還されてからは自衛隊が使用している。米軍も今なお訓練で利用している。 滑走路下に遺骨が残存しているという見方には二つの説がある。 一つは「生き埋め説」だ。島中央部は、死傷兵の多さから米軍が「肉ひき器(ミートグラインダー)」と呼んだ要塞群があった激戦地だった。そのため米軍が滑走路を急ごしらえで造成した際、中に日本兵が入ったまま重機でふさがれた壕が少なくないのではないか、というのがこの説の見方だ。 もう一つは「集団埋葬説」だ。島中央部は起伏がある地形だった。米軍はくぼんだ部分に土を盛って整地する際、多くの遺体を埋めたのではないか、という推測だ。 この二つの説の検証に向けた政府の動きは2012年に本格化した。防衛省が高性能地中探査レーダーを開発し、地下4メートルの範囲で大腿骨に似た円柱状の固形物がないか探索を始めた。壕の可能性のある空洞が地下10メートルまでの範囲で存在しないかも、このレーダーで探った。 結果、1798ヵ所で大腿骨に似た固形物、3ヵ所で空洞が見つかった。固形物はその後の掘削調査で、いずれも石や金属片など人骨以外だったと判明した。一方、3ヵ所の空洞のうち2ヵ所は探索済みの壕だった。2ヵ所とも滑走路の端付近にあり、コンクリートで覆われなかった滑走路外の壕口から内部に入って調べたのだった。 未探索だった残る1ヵ所の壕こそが、首相官邸の会議で報告された、あの「地下壕マルイチ」だった。