元世界王者の父で専属トレーナーが新型コロナ禍で死去
元WBC世界スーパーウェルター級王者のトニー・ハリソン(29、米国)の父であり専属トレーナーだったアリ・サラーム氏が新型コロナウイルスへの感染により死去したことが現地時間20日、明らかになった。ハリソンが自身のインスタグラムで発表したもの。59歳だった。 ハリソンは2018年12月に当時無敗だったWBC世界スーパーウェルター級王者のジャーメル・チャーロ(29、米国)を判定で下して世界ベルトを奪取した。この時、専属トレーナーとしてハリソンを支えたのが、父のサラーム氏だった。 サラーム氏は、元ウエルター級のプロボクサーで1984年から6年間、リングに立ち11勝(5KO)7敗の成績を残した。サラーム氏の父、つまりハリソンの祖父である故・ヘンリー・ハンク氏も、ミドル級やライトヘビー級で19年間も活動し、62勝(40KO)30敗4分の成績を残しているプロボクサー。3代続けてのボクシング一家で、8人の子供を授かったサラーム氏は、7番目の子供だったハリソンが、デトロイトで開業しているジム「SuperBad Fitness」をサポートしていた。 ハリソンは、ジャーメル・チャーロに3-0で勝ち、世界王座を奪取した試合の判定について「負けていた」「疑惑だ」などの批判を浴び、1年後の昨年12月に初防衛戦としてリマッチしたが、11回にKO負けを喫して王座から陥落していた。だが、「レフェリーのストップが早かった」と、試合後にクレームをつけ、父と共にジャーメル・チャーロとの3度目の決着戦を熱望、王座返り咲きへトレーニングを行っている途中だった。 ハリソンは、インスタグラムに新型コロナの犠牲者となった父への追悼文を掲載した。 「あなたは厳しい戦いをして遠くへ行きました。志半ばとなってしまいましたが、私たちは、人生のあらゆる段階で一緒にいました。これ以上、あなたに何を望めますか。私の右手は永遠に…少し休んでください。サヨナラではありません。いつかまた…」 サラーム氏の新型コロナの感染経路や症状などについての詳細は明らかになっていないが、ハリソンの言葉から推測するに、相当、苦しい新型コロナとの闘病があったのだろう。屈強な元ボクサーでさえ、死に至らしめる、新型コロナの恐ろしさが、全米のボクシング界に衝撃を与えた。まだ59歳。あまりにも早い逝去だった。