落合GMの協約違反疑惑への賛否
私にはコーディネイターという球団の役職と同時に野球評論家という立場がある。正確に言えば、コーチでもフロントでもない。落合GMは「ユニホームを着ていないから」と、球団フロントの人間が、ポストシーズンに選手を教えることに問題はないという独自理論を語ったらしいが、私は、第三者を通じてコミッショナー事務局に「私のような立場の人間がポストシーズンに選手を教えていいものか」ということを問い合わせた。 その答えは、白でも黒でもなくグレーというものだった。 ”しかし、このことが前例としてまかり通ると、今後、他球団も評論家に対してアドバイザーなりのグレーな肩書きを与えて、オフの指導を行うようなことが日常化してしまう可能性も出てくる。掛布さんの判断に任せるが、そういうことを承知しておいて欲しい”という見解だった。私は、現状のルールに照らし合わせて、グレーであるならば、球団及び選手に迷惑がかかることを考えて行動を控えた。 ■落合氏の勝手な解釈は間違っている そういう経緯があっただけにGMという立場にある落合氏の行動には、非常に違和感を覚えた。勝手に協約を解釈してしまうことは間違っている。落合GMなりに野球協約を読み込み、解釈がグレーであることと、ポストシーズンのあり方への議論を喚起させるためのメッセージとして、あえて問題行動をしたのかもしれないが、そのやり方も間違っている。GMという立場にある人間ならば、なおさら野球界のルールには神経を尖らせて遵守しなければならないだろう。実力行使をする前に、まずコミッショナーサイド、選手会サイドと、堂々と議論、協議をすべきである。 ■ポストシーズンは選手会が勝ち取った権利 そもそも、この野球協約173条のポストシーズンを遵守する問題は、私が中畑監督と共にプロ野球労組・選手会の幹部をしていた時代に勝ち取った権利だ。プロ野球選手は、2月から11月までの10か月の報酬しかもらっていないが、報酬のないオフの2か月間も球団に強制されるキャンプまがいの合同自主トレが横行していた。我々は、FA、10年選手制度の復活などの権利獲得を目指していたので、その前段階として「給料をもらっていない期間に球団の拘束を受けるのはおかしいでしょう」と、選手の権利確立を目指した。まずは、うやむやになっていた野球協約173条の遵守を12球団に通達したのである。結果、合同自主トレは廃止、現在に至っている。