Jリーグ優勝争いは混沌として後半戦へ 町田、鹿島、G大阪、神戸、広島......いずれも不安要素あり
【神戸、広島は取りこぼす試合が目立つ】 現在4位の昨年王者・神戸は、ここに来て取りこぼすことが増えてきた。その大きな原因は得点力の低下。第14節から複数得点が取れた試合が一つもなく、3試合で無得点。エースのFW大迫勇也がここまで4得点と、昨季までの活躍にやや陰りが見え始めていることは大きい。 神戸は前線の大迫、武藤嘉紀をはじめ、タレントの能力を生かして攻め込む、あるいは両サイドバックからのクロス、CKなどのセットプレーなど、とにかくシュートチャンスを数多く作り出し、前のクオリティによって決めきるチームだ。 ただ、形というよりクオリティに頼る場面が多いだけに下振れることもあり、それによって勝ちきれない、つば迫り合いで負ける試合が続いている。先述したように大迫が直近7試合で無得点なのは、その要因の最たる例だろう。 とはいえ、堅守は相変わらずで、DFマテウス・トゥーレル、DF山川哲史のCBコンビはとにかく堅い。得点力を取り戻せば、優勝争いに踏みとどまれるはずだ。 神戸以上にシュートチャンスの数に対して、得点数が割に合っていないのが5位の広島だ。堅守によって3敗と負けの少なさはリーグトップだが、引き分けの数も9つでトップというのは、今の広島をよく表している。 負傷からFWピエロス・ソティリウが復帰し、ジュビロ磐田戦、東京ヴェルディ戦と2試合連続の2ゴールは見事だったが、その後の3試合で1勝1分1敗と乗りきれない。DF荒木隼人がケガで長期離脱の可能性があり、MF川村拓夢も移籍と明確な補強ポイントがある。これに加え大事なところでの得点部分をなんとかしなければ、トップ3との勝ち点差を埋めるのは難しいだろう。
【降格圏クラブの共通点は守備の脆さ】 一方、残留争いでは降格圏に20位北海道コンサドーレ札幌、19位京都サンガF.C.、18位湘南ベルマーレの3クラブ。共通するのは守備の脆さである。 とくに札幌は20試合で40失点。昨季もリーグ最多失点だったが、それとほぼ同ペースだ。昨季はそれと同等の得点数が取れていただけによかったが、今季は16得点で得点力が激減している。 ただ、それは単に攻撃力の低下というよりも、戦術の肝であるマンツーマンが全く機能していないことが原因だろう。昨季は前から激しいマンツーマンの守備によって、いい形でボールを奪って攻撃に繋げるのが札幌のストロングポイントだった。 しかし、そのマンツーマンが曖昧で機能せず、相手に大きなスペースを与えて押し込まれる、あるいは裏を簡単に取られることで、いい攻撃に繋げることが難しくなっている。夏の補強が重要であるのは間違いないが、守備の強度が上がらない限り、この状況は続きそうだ。 京都も札幌と同じく、得点力の低さが致命的だが、湘南に関しては得点が奪えていて、戦い方も整理されている。それだけに町田戦以外すべての試合で失点している守備の不安定さを解決できれば、降格圏脱出は見えてくるはずだ。 優勝争いにしても残留争いにしても、これから迎えるハードな夏場をどう乗りきるか。毎年、この時期の補強によって大きくチーム状況が変わることは珍しくなく、各クラブが移籍期間にどう動くのか、目が離せない。
篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko