Jリーグ優勝争いは混沌として後半戦へ 町田、鹿島、G大阪、神戸、広島......いずれも不安要素あり
【鹿島は"らしさ"が戻った戦い方】 2位の鹿島は今季からランコ・ポポヴィッチ新監督を招聘して戦い方が定まり、ようやく鹿島らしいチームが戻ってきたと言える。守備ではDF植田直通、DF関川郁万、MF知念慶、MF佐野海舟の中央は強固で、とくに知念、佐野のカバー範囲は凄まじいものがある。 攻撃ではFW鈴木優磨のキープ力を起点に、MF名古新太郎、MF仲間隼斗、FW 師岡柊生らの流動的でダイナミックなカウンターは大きな脅威。さらに相手を押し込んだところへ、DF濃野公人、DF安西幸輝の両サイドバックが攻撃に厚みを加えるのは、実に鹿島らしい。 懸念があるとすれば選手層の薄さだ。とくにセンターバック(CB)は植田、関川のどちらかが欠けると、その穴を埋めるのは簡単ではない。また、鈴木の決定力やキープ力、ポジショニングセンス、チームに与える影響力などは、唯一無二の存在感で代わりはいない。この3人はここまでほぼ出ずっぱりだが、夏場もこのペースでコンディションをキープできるか。 さらに佐野の海外移籍の話もある。正直、近年はあまり補強がうまいとは言えない鹿島だが、夏の移籍期間で的確な補強ができるかは、8年ぶりのリーグ優勝には必須だろう。
【堅い守備を誇るG大阪】 3位のG大阪も鹿島同様に、チームの戦い方が整理されたことで調子を取り戻してきた。とくに、昨季は壊滅的だった守備の改善は目覚ましい。なによりも大きかったのは、DF中谷進之介というDFリーダーの加入だ。 高い守備能力と統率力で守備ラインをまとめあげ、リーグ最少の14失点という強固な守備を形成。DF三浦弦太を長期離脱で失ってもDF福岡将太が穴を埋め、その強度は保たれている。 チーム全体での堅実な守備からFWウェルトン、FW山下諒也のスピードと突破力を生かした鋭いカウンターというのが、今のG大阪の大きな強みだ。ただ、やはり最大の武器は、キャプテンFW宇佐美貴史の突破力と決定力だろう。 ここまで7得点はチーム内最多。それはもちろん、シュート数51、ゴール期待値4.7、チャンスクリエイト数42と攻撃のスタッツで軒並みチームトップだ。宇佐美の高いクオリティによって勝ち点をもたらした試合も多く、鹿島の鈴木同様に代えの利かない存在だ。 その宇佐美の得点数がチーム総得点の1/3を占める。多くの試合で1点差ゲームを勝ちきっている事実はすばらしい反面、チームで21得点というのは、この順位のチームとしてはやはり少ない。宇佐美の7得点も得点ランキングでは8位タイと特筆して多いわけではない。失点はしなくとも得点が取れずに引き分ける危うさは常に孕んでいる。 優勝争いをする上で引き分けは勝ち点2の取りこぼしである。相手の対策が進む後半戦は、宇佐美以外の得点源や得点パターンをチームとして増やしていきたいところだ。