「なぜ学校健診で脱衣が必要なのか」と問う保護者に知ってほしい学校健診の役割と「脱衣」の解釈
■学校健診の意義や大切さの共有を 一方で、学校関係者や保護者は「学校健診で医師に身体を見せることは、自身の健康を守るために必要である」ことを、子どもたちに詳しく説明することも大切ではないでしょうか。私がメンバーとして活動している「教えて!ドクタープロジェクト」では、学校健診について3枚のPDFにまとめました。ぜひ利用していただけたらと思います。 そのうえで、どうしても集団健診に抵抗がある場合は、クリニックでの個別健診という選択肢も今後は議論に上がるかもしれません。ただ個別健診にすると、親子でクリニックへ足を運ぶ必要が出てくるため、健診実施率はどうしても下がります。子どもの隠れた病気を見逃さないためにも、個別健診の場合は必ず受診していただく仕組みを工夫したいところです。 今回は学校健診がなぜ必要なのか、各検査の内容と必要性、また着衣と脱衣の問題についてまとめました。私たち医療者が学校健診にこだわる理由――それは学校健診だからこその高い実施率によって子どもの隠れた病気を見つけて治療へつなげたい、それにより将来的に不利益が起こらないようにしたいという一心からです。そして保護者の皆さんが脱衣に懸念を抱くのも「子どもの尊厳を守りたい」という気持ちからでしょう。 どちらも子どもたちのことを大切に思っているからこその意見ですから、同じくらい重要だと私は考えます。医師と学校、保護者、そしてお子さんが健診に対する知識や考え方のギャップを埋め合う努力をし、納得して検診が受けられる環境が整うことを心から願っています。 ---------- 坂本 昌彦(さかもと・まさひこ) 佐久総合病院佐久医療センター・小児科医長兼国際保健医療科医長 2004年名古屋大学医学部卒業。2009年小児科専門医取得。2011年東日本大震災を機に福島県に移り、県立南会津病院にて勤務。南会津では「教えて!ドクター」の活動の原型となる出前講座や啓発パンフレット作成に関わった。2012年タイ・マヒドン大学熱帯医学部にて熱帯医学研修コース(DTM&H)修了。2013年ネパール・ラムジュン郡立病院小児科にて勤務。2014年より現職。専門は小児救急、国際保健(渡航医学)。2024年帝京大学大学院にて公衆衛生学博士取得。日本小児科学会専門医および指導医。日本小児救急医学会代議員、日本国際保健医療学会理事。2015年から保護者の啓発と救急外来の負担軽減を目的とした「教えて!ドクター」プロジェクト責任者。Yahoo!エキスパートオーサー。Yahoo!オーサーアワード2022最優秀賞受賞。Eテレ「すくすく子育て」「キッチン戦隊クックルン」医事監修担当。著書に『子どもを事故から守る本』(中外医学社)、『赤ちゃん育児なんでもQ&A』(赤ちゃんとママ社)など。 ----------
佐久総合病院佐久医療センター・小児科医長兼国際保健医療科医長 坂本 昌彦