ブラジルで活躍する日系企業の今 (21) 安全かつ美味で手軽な日本食提供のゼンショー・ド・ブラジル社
「ブラジルで活躍する日系企業の今」を紹介する本連載の第21回目は、ゼンショー・ド・ブラジル社の青山昇弘(のりひろ)社長(43、静岡県出身)に話を聞いた。同社が運営するのが、2010年にサンパウロ市の東洋人街に位置するメトロ・サンジョアキン駅側で一号店をオープンしたブラジルの『すき家』である。オープンから14年、現在はブラジル国内で27店舗に拡大し、牛丼やカレーを中心とする日本を代表する外食チェーンによる食のインフラが構築されている。
世界に進出する「すき家」
「日本の味をそのまま提供」をモットーとするブラジルの『すき家』は、日本のゼンショーホールディングスの直営店である。同社の外食事業はクライアントに「選べる楽しさ」を提供するため、牛丼、寿司、ハンバーグ、うどん、コーヒーショップなど、日本国内で約30のチェーン店ブランドを展開し、すき家はその一つである。 外食チェーンでは日本最大、海外店舗数は2024年3月期に1万店舗を超える見込みで、世界の外食業界のチェーン店舗数ではトップ10に入る規模である。 現在、すき家だけで日本国内1900店舗以上、日本の国民食を世界へ広げるべく海外(中国、タイ、マレーシア、インドネシア、ベトナム、台湾、香港、メキシコなど)では670店舗を展開している(2023年12月末時点)。 青山社長が2003年にゼンショーホールディングスに入社した当時、日本国内のすき家は400店舗ほどだった。当時からゼンショーの創業者である小川賢太郎CEOがフード業界で世界一になることを目指していたが、それが確実に現実となっていくのを見ながら、実際にその成長にも携わってきた。 すき家がまだない地域で出店を広げることなどに興味があったことから、「海外でも日本と同じようにすき家を成長させ、日本食をもっと身近に、気軽に召し上がって楽しんでいただけるお店づくりをしたい」と思いを語る。
より豊富な日本の国民食をメニューに
世界中で、基本的に日本のすき家の味を展開している。ブラジルでは料理を作るスタッフが本来の日本の味を知らないことが多いため、最初に正しい味の確認を日本以上に丁寧に行っている。 ブラジルでは日本人よりも味の濃いものが好まれる印象があるため、若干濃い目の味付けの商品も用意されている。ブラジルの人に人気があるのは、しめじ牛丼やカツカレー、ブラジルならではのバーベキュー・ベーコン・チーズ丼など、日本の人にはネギ玉牛丼や各種定食が人気だ。 ブラジル店はオープン以来、牛丼に加え、知名度の高い日本食をメニューに揃えることで、まずはすき家に関心を持ってもらうことに努めてきた。日本のすき家にはないラーメンやトンカツの丼物、定食なども主力メニューである。 毎年、定期的に日本から商品開発者が訪れ、日本で定番の商品とブラジルで需要のある商品を考慮し、現地向けの新メニューの開発が行われている。一昨年には近年のアンガスビーフ人気を受けて、ブラジル産アンガスビーフを100%使用した「焼肉丼」もメニューに加えられた。 日本の料理を通じて様々な食べ方を提案できるように、現在は毎月のキャンペーンメニュー導入と年4回のメニュー更新を行っている。今年2月には新メニューに期間限定「テリヤキ・サーモン丼」、キャンペーンメニューとして「牛丼キング(通常の5倍の肉と3倍のご飯)」と「カレーキング(通常の3倍のカレーと2倍のご飯)」がサービスされる。 商品・外観・内装も含め、多くの人々にもっと日本を体感してもらいたいと、各店舗では日本的なデザインに改装も進めている。
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