「後味が悪すぎる…」昭和『ウルトラマン』人類の犠牲となった「悲劇の怪獣」たち
■『ウルトラセブン』に登場した地球の先住民…!?
続いて紹介するのは1967年から68年に放送された『ウルトラセブン』の第42話「ノンマルトの使者」に登場した「ノンマルト」だ。 このエピソードでは謎めいた少年・真市が、海底の開発を進めるとノンマルトが怒る、という警告メッセージを伝える。その直後に海底開発センターの海洋調査船「シーホース号」が爆破される事件が発生した。 ウルトラセブン(モロボシ・ダン)によると、故郷のM78星雲で「ノンマルト」は地球人を意味する言葉とのこと。また真市少年の話によれば、ノンマルトは地球の先住民だったが、人間のために海へ追いやられたという。 やがてノンマルトに操られた怪獣ガイロスが出現。これはウルトラ警備隊によって一時的に撃退される。しかし、ノンマルトは強奪したイギリスの原子力潜水艦「グローリア号」で攻撃を開始。ガイロスも再び姿を現す。 しかし、ガイロスはウルトラセブンが倒し、グローリア号もウルトラ警備隊の攻撃によって沈黙する。ただ、モロボシ・ダンがウルトラセブンに変身する直前に、真市少年が突如出現。人間より弱いノンマルトを攻撃しないでほしいと訴えるものの、モロボシ・ダンはこれを聞き入れずに変身する。 その後、ウルトラ警備隊は海の奥底で、ノンマルトの住む「海底都市」を発見する。キリヤマ隊長はノンマルトが地球の先住民だという話に思い悩みつつも、目の前の施設が「侵略基地」であることを危惧して攻撃を決断。ノンマルトの海底都市は爆破された。 戦いのあと「我々の勝利だ。海底も我々人間のものだ」というキリヤマ隊長の言葉は、あまりにも空しかった……。
■無慈悲な人々に惨殺された心優しき宇宙人
最後に紹介するのは1971年から72年に放送された『帰ってきたウルトラマン』の第33話「怪獣使いと少年」に登場した「メイツ星人」だ。 怪獣ムルチに襲われていた人間の少年・佐久間良を救い、ムルチを地中に封じ込めたメイツ星人。人間の老人の姿になり、天涯孤独の佐久間少年と廃屋で細々と暮らしはじめる。しかし、少年が超能力を使う宇宙人だという噂が流れ、佐久間少年は町の人々から迫害を受けてしまう。 そこでMATは事態を収束させるために郷秀樹隊員(ウルトラマン)を派遣。郷隊員は少年と暮らしていた老人と接触する。 そこで人間の老人の姿になっていたメイツ星人は郷隊員に対し、1年前に地球の風土や気候を調べるために飛来し、宇宙船は地中に隠したこと、そのときに佐久間少年を助けてからは親子のように暮らしていることを告白する。 このまま地球に住みついてもいいとさえ思っていたが、メイツ星人の体は地球の汚染された空気に蝕まれてしまう。それを知った佐久間少年が、かわりに宇宙船を探し出してメイツ星人を母星に帰そうとしていたのである。 その事情を知った郷隊員は、佐久間少年とともに宇宙船を探しはじめるが、その最中に暴徒と化した人々が少年を襲撃。メイツ星人は、少年を助けるために人々の前で自分の正体を明かす。しかし、人々の不安は収まらず、暴徒に加わっていた警察官がメイツ星人を射殺してしまう。 これによって、メイツ星人が封じていた怪獣ムルチが出現し、暴れ出す。人々はMATの郷隊員を頼るが、郷隊員は「勝手なことを言うな」と冷めた態度をとったのが印象的だった。 歴代のウルトラマンたちは地球の平和のために戦い続けたが、中にはまったく悪くないのに悲劇に巻き込まれ、消えていった哀しい怪獣や宇宙人もいた。いったい何が善で何が悪なのか……。昭和の「ウルトラマン」シリーズには、いろいろと考えさせられるエピソードも多かった。
エンピツやまちゃん