ダークチョコレートは高血圧のリスクを下げる
ダークチョコレートの摂取量が多いほど高血圧になりにくい
まず、英国の大規模観察研究「UK Biobank」の参加者6万4945人から収集された全ゲノムデータとダークチョコレートの摂取量に関するデータを関連付けて、ダークチョコレートの摂取量の多寡と関係する21の一塩基多型(*2)を同定しました。 続いて、主に欧州系の人々を対象とした計9件の研究データを統合したメタ分析から、12種類の心血管疾患(心不全、心筋梗塞、心房細動、高血圧、脳卒中、静脈血栓塞栓症など)のそれぞれについて、発症者と非発症者の全ゲノム情報を入手しました。 それらのデータを組み合わせてメンデルランダム化解析を行い、遺伝的に予測されるダークチョコレートの摂取量と、12種類の心血管疾患のリスクとの間に因果関係があるかどうかを検討しました。 メンデルランダム化解析に用いた複数の方法のうち、1つの方法では、ダークチョコレート摂取量が1SD(標準偏差1つ分)上昇するにつれて、本態性高血圧(原因が特定できない高血圧で、日本人の高血圧の約9割を占める)のリスクが有意に低下することが明らかになりました(オッズ比0.73)。また、静脈血栓塞栓症のリスクも低下していました(オッズ比0.69)。しかし、別の方法を用いたところ、静脈血栓塞栓症リスクとの関係は有意にならず、一貫した関係を示したのは本態性高血圧のみでした。 なお、本態性高血圧、静脈血栓塞栓症以外の心血管疾患については、どの分析方法を適用してもダークチョコレートの摂取量との間に有意な因果関係は見られませんでした。 今回の解析は、ダークチョコレートの摂取量が多いほど高血圧になりにくいことを示しました。ただし、チョコレートに含まれている脂質や糖質には注意が必要です。 *1 Yang J, et al. Sci Rep. 2024 Jan 10;14(1):968. *2 多型とは、集団の遺伝子配列を比較したときに、1%以上の人に見られる変化(多様性)のこと。その変化が1個の塩基の置換である場合に「一塩基多型」と言う。 (大西淳子=医学ジャーナリスト)