「静かな戦争」の始まりか 台湾やバルト海でも 相次ぐ海底ケーブル損傷、中国船関与か 通信インフラ破壊行為の意図は
台湾の沿岸警備を担当する海巡署は6日、北部の海域で中国人が乗船した貨物船が海底ケーブルを破損した疑いがあり、捜査していると発表した。北ヨーロッパのバルト海でも昨年11月、沿岸各国を結ぶ海底ケーブルの損壊が2カ所で相次ぎ、中国船が関与した疑いがあるとみられている。現代生活に欠かせない通信インフラの破壊行為が、習近平国家主席率いる中国による妨害行為だとすれば意図は何なのか。識者は「静かな戦争」が始まっている可能性を指摘する。 【写真】台湾で海底ケーブルを損傷させたとみられる貨物船 台湾でのケーブル破損は今月3日、中華電信からの通報で発覚した。海巡署は現場海域で貨物船を確認したが、気象条件が悪かったことなどから、乗船して調査できなかったという。 貨物船の船籍はカメルーン、船主は香港籍だが、船員7人全員が中国人とされる。貨物船が韓国の釜山港に向かったため、台湾当局は韓国当局にも捜査協力を要請した。海巡署は貨物船の意図を確認できないとしながらも、「中国による妨害行為」の可能性が排除できないと説明した。 バルト海では昨年11月、ドイツ北部ロストックとフィンランドの首都ヘルシンキを結ぶケーブルと、リトアニアとスウェーデンのゴットランド島間のケーブルが損壊した。スウェーデン当局などは、ロシアを出港して付近を通過した中国籍の船が関与した疑いがあるとみて捜査している。 中国の関与が疑われる海底ケーブルの相次ぐ損壊は何を意味するのか。 軍事ジャーナリストの世良光弘氏は「ロシアが2014年にクリミア半島に侵攻した際には、兵を進めるだけでなく、ウクライナの通信や電力などインフラの破壊活動を行った。台湾のケーブル損壊に中国が関与しているとすれば、一種の『静かな戦争』が始まっているということではないか。『台湾有事』の際には日本のインフラも狙われることが予想されるため、警戒が必要だ」と話した。