12年ぶり復活勝利の中日・松坂大輔が貫いた「美学と流儀」
強面の森監督も感激していた。 賛否がある中、「もう限界」「肩は壊れている」と噂のあった松坂の獲得を決断。故障していた右肩の状態に常に配慮しながら、その復活ロードを支えてきた。4連敗中で、先発ローテーの一人であるジーが血行障害の疑いで帰国するなどのチームの危機に、その松坂が価値ある勝利を挙げたのだ。ただの1勝ではない。 「やつにとって凄い勝利。うちにとってもね。連敗中だったし、2けた(今季10勝目)になった勝利。9連戦の中で松坂で勝てた。選手も松坂のためにという思いもあったのだろう」 復活の2文字を刻み、止まっていた松坂の時計の針が再び動き始めた。 「チームも僕もまだまだです。今日の日をきっかけにチームも僕ももっともっと上へ行けるように頑張っていきたいと思っています。今後? 間隔を詰めて投げていきたい。(登板は)監督が決めることだが、ひとつも負けたくない。理想としては、できるだけ多く勝ちたい」 松坂は、中13日、中10日と、少しずつ登板間隔を短縮してきたが、さらにスパンを短くすることを希望している。中6日のローテーで回るのが本人の理想だ。 だが、無理をして右肩痛を再発させたら元も子もない。 元巨人の評論家、鈴木尚広氏も、「ローテーに入ると、肉体への負担が増す。ほぼ3年間、何もやっていないことを考えると、調整を万全にスポットで回っていくほうがチームにプラスではないか。それで、5、6勝すれば、十分に1年目の役目は果たすことになると思う」との意見。 まだ中6日でローテーに入れる決断は時期尚早かもしれない。 ただ松坂には、観客動員力やチームをひとつにまとめる特別な力があり、その存在感は数字だけで計り知れない。この日も、場内インタビューの最後で、「僕が投げるとき、たくさんの方に来てもらって感謝している、僕が投げる試合だけでなく、他のピッチャーが投げる試合にもたくさん来ていただければ」と、場内のファンに呼びかけた。これもまた松坂世代のリーダーの流儀である。