12年ぶり復活勝利の中日・松坂大輔が貫いた「美学と流儀」
この日の114球の内訳を見るとストレートが29パーセント、カットが43パーセント、スライダーが11パーセント、チェンジアップが10パーセント、カーブ、シュート、フォークが数球という割合だった。 「連敗を止めるために飛ばしていった」と松坂が言うように、スタートから打者一回りちょっとは、ストレートを中心に組み立てて力で押していった。1回のストレートの割合は63パーセント、2回は40パーセント、3回は48パーセントもあった。3回、戸柱恭孝のバットを折ってショートフライに打ち取ったストレートは今季最速の147キロを示した。だが、5回、6回は、それぞれストレートはたったの1球ずつしか投げていない。 序盤にストレートを意識させる布石を打っておいた。その上で6種類の変化球を使い、打者に何がくるかを絞らせない。 8四死球に対して「フォアボールも非常に多くて、僕らしいといえば僕らしい」と、松坂は反省していたが、その荒れ球が逆に功を奏した。ラミレス監督が「ストライクゾーンは積極的に振って行こう」と指示していただけに、なおさら動くボールに手を出してくれた。配球を考え尽くした技巧派・松坂のニュースタイルは、ことごとく横浜DeNA打線のバットの芯を外していった。 森監督は「内容は、今回が一番悪い。中10日か、投げすぎかわからないが、いい状態ではなかった」という。4月19日の阪神戦で、今季最多の123球を投げ、中10日と間隔を詰めた影響があったのかもしれないが松坂は、経験と頭を使って、そこをカバーした。 横浜高校の後輩、筒香嘉智との対戦では、勝負師の一面も見せた。 第1打席は、144キロのストレートを見せておいてチェンジアップを外に落としてレフトフライ。3回二死一塁で迎えた第二打席では、徹底してストレートで押した。結果、カットボールが指にひっかかって四球を与え、この日は、3打席で2つの四球を与えることになったが、18.44メートル間の戦いで、後輩にメッセージを伝えた。それも松坂が37歳になっても貫き通す美学だろう。 「チームが(4連敗で)苦しいときに、これだけたくさんの人に入ってもらった中、久しぶりの勝利を味わうことができて最高です。ものへの執着心はあまりないんですが、今日のウイニングボールは特別なものになりました」 記念のボールは苦難の時代を支えてくれた妻へ贈るつもりだという。