【毎日書評】やりたい気持ち、意欲を引き出し目標達成をアシストする「コーチング」の基本
『読むだけコーチング』(三宅俊輝 著、白夜書房)の著者は、自動車整備士を経て研修講師・プロコーチとして独立したという異色の経歴の持ち主。これまで「メンタルコーチ(心の整備士®︎)」として、のべ550社、1万5,000名を超える人たちをサポートしてきたのだそうです。 向き合ってきたのは、自己否定感に苛まれ、自信が持てずにいる方々。そうした人たちに対して自分らしく生きるすべを提供し、「成功」へと導いてきたというのです。 ところで、よく耳にする「コーチング」については、いろいろな捉え方があるのではないでしょうか。スポーツ選手を育成する「コーチ」を思い浮かべる人もいらっしゃるかもしれませんし、そもそも、「いまさら人に聞きづらい」という側面もありそうです。 しかし本書でいうコーチングとは、「相手(クライアント)のやりたい気持ちや意欲を引き出し、目標達成をサポートするコミュニケーションスキル」を指すようです。 なお著者は、現代においてはコーチングが必要とされる場面が増えてきているように感じているのだといいます。 したがって職場においても、たとえば職場の人間関係に悩む若いビジネスパーソンや、部下に自主的に働いてほしいと思っている上司などにとっても、コーチングは有効なツールだというのです。 本書では、コーチングの意義や部下のモチベーションの高め方、GROWモデルと呼ばれるコーチングの基本の進め方、コーチングの際に必要となる「傾聴」や「質問」といったテクニック、さらには1on1の実践例まで、1冊で基本的なコーチングをマスターできるように書かれています。(「はじめに」より) そんな本書のなかから、きょうは第1章「コーチングとは何か」に焦点を当て、基本的な事項を確認してみたいと思います。
コーチングの歴史
「コーチ」(coach)という言葉が生まれたのは、1500年代。もともとは「馬車」を意味していました。人気ブランドの「COACH」のロゴにも馬車がデザインされています。 その後、「大切な人をその人が望むところまで送り届ける」という意味が加わり、1840年代に入ると個人教師のことを「コーチ」と呼ぶようになります。さらに1880年代にはスポーツの指導者も含むようになりました。(13ページより) マネジメントの分野に「コーチ」の用法が登場したのは1950年代のこと。経営学の研究が盛んな欧米では、そののち1970年代からビジネスコーチングが普及しはじめました。日本では1990年代後半のころに欧米からコーチングの概念が輸入され、徐々に拡大していったといいます。 一般社団法人国際コーチング連盟では、コーチングを「思考を刺激し続ける創造的なプロセスを通して、クライアントが自身の可能性を公私において最大化させるように、コーチとクライアントのパートナー関係を築くこと」と定義しているようです。 つまりコーチングは、「コーチとクライアントが信頼関係で結ばれ、コミュニケーションの力によってクライアントが新たな気づきを得たり、自身の目標を発見したりすること」となるわけです。(13ページより)