【支援の“格差”】ウクライナへの支援が集まる一方で多くの難民は過酷な環境に… 人道支援の実態とは?
――紛争の被害国の状況と世界の支援状況には、どれほどギャップがあるのか。 アメリカがウクライナに出している支援だけで見ても、全世界のすべての国がほかのすべての国に国連を通して出している人道支援の額を上回っている。 ウクライナで苦しんでる人は当然たくさんいて、人道支援が必要なのは間違いないが、そこでたくさんの人が飢え死にしているわけではない。一方で、イエメン、南スーダン、コンゴ民主共和国、マリでは、多くの人々が飢え死にしている。 人道的なニーズが全く違うにも関わらず、お金が集まっていない。今の世界の支援の状況と、紛争による被害の状況、その人道的なニーズは、どう見てもバランスがおかしい。 さらにいえば、国連が人道支援を集める際に、これぐらいのお金が必要だ、というニーズを発表するが、これも実は実態とはズレている。つまり、ニーズそのものではなくて、どれぐらいが集まりそうか、ということを考慮して設定することがある。 例えば、約20年前にアメリカがイラクに侵攻した際、アフリカの紛争の人道的なニーズの方が大きかったのにも関わらず、イラクに対する国連が出す人道的なニーズの金額の方が圧倒的に多かった。それはアメリカが国としてのイメージ回復のために資金をたくさん出すだろうと想定されたからだ。 今回もウクライナは大きく注目されていて、多額の支援金を出す国が複数あるなかで、ニーズは高く設定されている。しかし、逆にコンゴ民主共和国に対しては、どう頑張っても十分には集まらないと分かっているため、ニーズ自体も低く設定されているのが現状だ。 ――メディアが注目していないけれど、規模でみると大きな人道危機が起こっている地域は、どのような理由で注目されないのか。 コンゴ民主共和国、南スーダン、イエメンなどメディアが注目していない地域というのも、国からの視点で考えると、やはり政治的、あるいは戦略的な価値が低いとみられるようなところだ。 国民側の視点から考えると、その被害者たちにどれほど共感ができるのか、というところだ。この共感できる要因については様々な側面があるが、ひとつの側面は、やはりその生活水準だ。 ウクライナにいる人たちが自分とちょっと似たような暮らしをしていそうだ、車に乗っている、アパートなどに住んでいる、といった考えだ。一方、南スーダンの農村部に暮らす人たちの生活には、あまり共感ができない、という側面がある。 また、日本のメディアはアメリカのメディアにも影響を受けているので、アメリカが重要視していることを日本も重要視する傾向がある。色々な要素が複雑に絡み合っている。 現在、ウクライナ以外のほかの国からも多くの難民が出ている。今年、紛争が起きたスーダンにおいても、日本人が飛行機に乗って去ってから報道はほとんど消えたが、紛争は当然終わっておらず、むしろ大きくなっている状態だ。今年だけで、現時点で約480万人の難民と避難民が出ていると言われている。 メディアと人道支援は密接に関わっている。つまり、メディアの注目が集まっているところにも支援が集まり、注目されてないところには多くの支援は集まらない。 卵と鶏の話ではあるが、メディアがどこに注目するかが、多くの人命に関わっている。