《今や最大の音楽資産管理会社》「もはやエレキの会社ではない」ソニーがKADOKAWAを必要とする理由
もちろんIPの拡大は音楽に限らない。2020年から2021年にかけて世界的に大ヒットした劇場版アニメ映画『鬼滅の刃 無限列車編』を手がけたのはソニー・ミュージックの子会社、アニプレックス。LiSAが歌った主題歌『炎(ほむら)』の版元はもちろんソニー・ミュージックだ。 2021年には、日本のアニメを世界200か国に配信するサービスで急成長中の「Crunchyroll(クランチロール)」を約1300億円で買収した。 まだ結論は出ていないが、KADOKAWAとの買収交渉はこの延長線上にある。先んじて買収したクランチロールは世界中のアニメファンに日本のアニメを届ける発射台であり、ソニーにはそこに載せる「弾」が必要だ。 日本独特のオタク向けアニメを大量に生み出すKADOKAWAのコンテンツが世界市場に打って出るための「有力な弾」になり得るかどうかは今後の成否を見届ける必要がある。 ただし、KADOKAWAの夏野剛社長は「IP創出」も経営の基軸に据えてきた。2024年度の統合報告書で夏野氏は「2023年度に5900点だったIP創出点数を2028年3月期までに7000点に増やす」と宣言。 このなかにはアニメだけでなく、ドラマ、漫画、ライトノベルを中心とした書籍なども含まれる。2024年に米動画配信大手のネットフリックスで配信されたドラマ『極悪女王』はKADOKAWAグループの角川大映スタジオで撮影された。 ■全文公開:【ソニー帝国の野望】KADOKAWAのコンテンツを“弾”に世界市場を狙う “エレキの会社からエンタメの会社へ”20年で大きく変わった「稼ぎ方」を完全レポート 【プロフィール】 大西康之(おおにし・やすゆき)/1965年生まれ、愛知県出身。ジャーナリスト。1988年早大法卒、日本経済新聞社入社。日経新聞編集委員などを経て2016年に独立。著書に、『最後の海賊 楽天・三木谷浩史はなぜ嫌われるのか』(小学館)など。ベストセラー『起業の天才! 江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男』(新潮文庫)が文庫化されて発売中。 週刊ポスト2025年1月3・10日号