人材が定着し活躍する組織文化を浸透させるには 【原文】Develop a staying, growing and thriving culture
ステップ2:学習を自分事とし、好奇心に報いる
学習を奨励する企業文化では、組織の全員が模範を示さなければならない。学習戦略を一方的に受け入れさせるだけでは足りない。経営幹部も含めて誰もが学習の背後にある「なぜ?」を知る必要がある。 知識を向上することの結果や影響を誰もが自分事として意識しなければならない。学習に費やす時間と労力は報われるものと認識し、実際にそれを体験しなければならない。 たとえば、誰もがビジネスやテクノロジーに関して適切に判断できるようになれば、デジタルトランスフォーメーションは容易になる。それに伴う生産性の向上は、従業員にも会社にも利益をもたらす。 学習が業績に及ぼす影響の因果関係に注目し、学習がもたらす結果に報いなければならない。 好奇心に報いることは、学習に熱心な人を褒めたり、昇進させたりすることだけではない。批判的思考を育て、たとえ対立を招くとしても議論し、自分の意見を言うことを奨励する環境をつくることも重要である。さらにこうした環境には、学習と能力開発に透明性があることで、心理的安全性が生まれる利点もある。従業員は自分にスキルアップが求められており、新しく習得した知識を積極的に使い、その結果期待外れであったり望ましい結果でなかったりしても非難されることはないことを理解する。 従業員は、過度なイノベーションに怖気づくことなく、斬新な戦略を提示しようと意欲的になる。こうすることで、最終的には自分の仕事と組織の文化とのつながりを強めていく。 学ぶこと、試すこと、学び直すことをバランスよくとらえる視点が不要というわけではない。組織の戦略と文化は、さまざまなやり方によって相互に強め合う必要がある。そのために、たとえば進捗の説明責任を求めると同時に、前向きで本格的なコーチングとフィードバックを十分に体験させることをバランスよく行うアプローチが必要になる。
ステップ3:コミュニティ、経験、コンテンツの充実した学習ポートフォリオを設計する
リモートワークで一定時間勤務する従業員の50%以上が、孤立を感じると答えている。この感覚をさらに強めているのは、多くの学習戦略がテクノロジーによってむしろ人とのつながりを狭めていることだ。バランスのとれた学習および能力開発戦略によって学習文化を促進するには、コミュニティ、経験、コンテンツという3つの重要な要素の最適な組み合わせが必要だ。 ・コミュニティは、説明責任を持つために必要なつながりを生むものとして、その人にとって永続的な変化を実現するために一番良いものとなる。 ・経験は、マインドセットを一新し、変化する力を生み出す最も効果的な方法のひとつである。 コンテンツは、ものの見方や働き方を導き、強化する土台となる。 ・この3つのバランスをとることが非常に重要であり、学習するすべての組織はこれを最優先事項とするべきだろう。 参加者が学習ポートフォリオに意義があると感じているかどうかを判断するには、従業員エンゲージメント調査などの方法で影響を測定するとよい。こうした測定ツールを合わせて、頭、心、手の3つのカテゴリーを調べるべきだろう。頭については、学習によって知性が活発になり、競合他社にまさる業績をあげるという会社の使命に貢献できるかどうかを測定する。 心の測定では、参加者が幸福かどうかを判断する。手については、学習が生産性とパフォーマンスの向上につながっているかどうかを測定によって確認する。 ほとんどの企業は、人材育成が不可欠であると考えている。ところが、学習と能力開発に関する考え方が旧態依然のリーダーがあまりにも多い。優秀な人材がすぐに転職する現代の労働市場において、これは問題だ。 従業員の定着率を高め、エンゲージメントを高めるには、すべての関係者にプラスとなり、ダイナミックな学習文化を創造する目的意識の高いトレーニングに投資すべきだろう。 「学習文化は人材を維持するために『あればよいもの』だけではない」 HR Daily Advisor 掲載