【有馬記念特集・思い出の有馬有終V】17年キタサンブラック 世間の常識も超越した7冠馬イブのラストラン
「有馬記念・G1」(22日、中山) 過去にラストランで暮れのグランプリを制し、競走馬生活を終えた名馬を紹介する当欄。今回は17年キタサンブラックを振り返る。 ◇ ◇ 極限まで鍛え抜かれた肉体は血の限界も、世間の常識も超越した。史上最多タイの芝G17勝(当時)の懸かった17年有馬記念。キタサンブラックは、伝説になった。 若駒の時には手脚が異様に長くてきゃしゃ。見栄えはせず、デビューも明け3歳の1月末と遅れた。決して超良血とは言えない。母父サクラバクシンオーの血統背景から、常に距離不安もささやかれた。それでも3歳秋には菊花賞をV。古馬になると一層ハードになったトレーニングにも食らいつき、4歳時には天皇賞・春、ジャパンCを制覇。一流馬の仲間入りを果たした。 そして迎えた5歳。肉体面はさらに充実し、タフネスぶりに磨きが掛かった。この年に走った6戦は全てG1。王道だけを歩んだ。ラストランに選ばれたのは有馬記念。クリスマスイブの中山には10万人を超えるファンが詰めかけた。単勝1・9倍のオッズにファンからの期待、信頼がうかがえた。 主戦の武豊はゲートを出て迷わずハナ。淡々と、そして丁寧にラップを刻んだ逃走劇は、後続に影すら踏ませず1馬身半差をつけての完勝だった。「集大成という気持ちがあった。結果の大きさは昨年の2着で分かっている」と鞍上。サトノダイヤモンドの2着に敗れた前年のリベンジにも成功した。 夕闇の競馬場で行われた引退セレモニー。オーナーの北島三郎氏は涙を流しながら、「ありがとうキタサンブラック」、「まつり」を熱唱した。皆に見守られ愛されて強くなった7冠馬の蹄跡は、ファンの記憶に深く刻み込まれている。