年収430万円「パワーストーン」に助けを求める、43歳男性の「絶望的な生活」…気が付けば400万円の借金に膨れ上がっていた
社会不安とスピリチュアルの密接な関係
2022年7月、安倍晋三元首相が銃弾に倒れてからもうすぐ2年を迎える。 犯人として逮捕された山上徹也(42)の犯行理由の供述から、あらためて新宗教への批判が集まる一方で、占いやパワースポット、スピリチュアルによすがを求める人の数は絶たない。この背景には、日本の不安定社会と密接なつながりがありそうだ。 【マンガ】3500万の住宅ローン組んだ「年収700万夫婦」が「地獄を見た」ワケ 1970年代、ベトナムの反戦運動からはじまり、戦後から続いた高度経済成長にかげりが見え始めたなかで目に見える物質的な豊かさから、目に見えないものの豊かさに目を向ける若者が増加する。 当初は「精神世界」と呼ばれていたものは、のちの『ノストラダムスの大予言』のメガヒットを経て、その意味が“不思議なものの力”へとつながり、テレビや雑誌などでは心霊現象や超常現象、未確認飛行物体や都市伝説等の特集が組まれ、オカルトは大人気コンテンツとしての地位を確立する。 その後勢いはやや減速するものの廃れることなく続き、1990年代には『特命リサーチ200X』『奇跡体験アンビリバボー』『学校の怪談』シリーズなどの番組が放送。 第二次ブームが花開く最中の1995年、世間を震撼させた無差別殺人・テロ事件が起こる。オウム真理教による「地下鉄サリン事件」だ。フリーターと呼ばれる非正規雇用者が不安定な生活を強いられる社会背景の真っただ中に起きた事件に、当時はオウム真理教と社会不安の因果関係の解説する番組も組まれていた。 これまで「エンタメコンテンツ」として消費されてきたオカルトが「恐怖を煽る装置」として書き換えられ、それを機にエホバの証人や旧統一教会など新興宗教の存在も一般的に取りざたされた。 これにより一旦はブームも下火になったものの、サリンから10年後の2005年、スピリチュアルの力で悩みを癒す『オーラの泉』が始まりパワースポットや聖地巡礼などにも注目が集まった。
「パワーストーンだけが僕の味方」
恋愛経験ゼロの康太さん。子供のころから無口で友達は少なくて、いつも教室のはじっこにひとりでいるようなタイプだった。たまに好みの女子がいても話せるわけもなく…次第に、まだそう売れていない「これから」なアイドルの推し活やパワーストーンにはまるようになる。 初体験は風俗。キャバクラに行ったが、「この雰囲気は無理」と二度目以降はなし。そしてまた、次第にパワーストーンにはまり、今や400万円のカードローン地獄……本当は結婚したいのに恋愛すらできない、やりたいことも見つけられないままの43歳の康太さんは苦悩をこう吐露する。 「普通の人たちは、どうやって恋愛のきっかけをつかむんですかね? 僕は生まれてこのかた、たった一度も恋愛をしたことがなく、やりたいことも見つからずに大人になりました。 ごく普通の家で普通に育ち、自分は普通の感覚で育ったつもりでした。確かに、子供時代から、まわりの子たちみたいにうまく遊べなくて友達がいなかったけれど、最初は悩みとして認識してはいなかったんです。 でも…今はひとり暮らしの部屋で、ときどき嫌な夢を見ては叫びながら起きてしまいます。 そんなときは、枕元に置いているパワーストーンを握りしめて、心を落ち着かせます。パワーストーンだけが僕の味方。だからいいのがあれば買い続けて、カードローンは400万円くらいに膨れてしまいました。どうしたらいいのか」 康太さんはスポーツ用品メーカー社員。年収は約430万円の経理職。「同業種の同職種で僕の年代ならごく普通の収入」なのだそう。 実家は九州でひとりっこ。「なんとなく東京に行きたい」というフワッとした気持ちで私立大学経済学部に入学し、そのまま東京在住である。父親は地元の工務店社員。 母親はパートかけもちをしながら家計を支え、仕送りをしてくれた。康太さんが大学を卒業して自立してからは、母親は週2回程度の軽作業のパートだけで、あとはのんびり過ごしているという。