運転見合わせが相次いだ新幹線 重要インフラに忍び寄る技術継承の危機 ハイテク支える「人の手」の大切さ
原発再稼働にも技術継承の問題
インフラをめぐる問題は、今年再稼働した原発も無関係ではない。 宮城県女川町(おながわちょう)にある東北電力の女川原子力発電所。10月29日、東日本大震災の発生以来、稼働を停止していた2号機が再稼働した。重大事故を起こした東京電力の福島第一原発と同じ「沸騰水型(BWR)」というタイプの原子炉で、同じ型の再稼働は震災発生後初めてのことだ。 約30年間、女川原発で原子炉機器の点検管理にあたってきた東北電力元社員の後村昌和さん(77)は、2号機再稼働によりエネルギーの安定供給と脱炭素社会の実現を両立できると期待を寄せる一方、「経験者不足」への懸念を口にする。後村さんが現役の頃は先輩の指導を受けながら継承してきた技術が一旦途絶えてしまっていることが「不安」だという。 東北電力は女川原発で働く技術者約500人のうち4割ほどが原発の運転は未経験としている。関係は不明だが、再稼働に向けた工程では人為的なミスが発生。社長も会見で謝罪することとなった。
技術継承へ メーカーの取り組み
福島第一原発事故以来、13年間の空白があったBWRの運用。技術継承に危機感を持ったメーカーは、シミュレーション設備を社内に作り、若手社員に対する運用研修を行っている。実際に女川原発の再稼働に携わった東芝エネルギーシステムズの長谷川学フェローは「電力会社の運転をサポートしながら勉強できればよかったが、そういうことができなかった」とシミュレーターを設置した理由を明かす。 研修では地震や津波が発生した際の原子炉の状況を再現し、注水作業などの模擬体験を行うこともできるという。「二度と福島第一原発のような事故を起こしてはならない」と長谷川フェローは強調する。研修を受けた若手社員は「技術だけでなく思いも引き継ぎ、安心と安全を届けられる技術者になりたい」と目標を口にした。
普段は見えない優秀なインフラ
技術の蓄積によって世界にも類を見ない充実度を誇る、日本のインフラ。最新の技術に基づくのはもちろんだが、細かな部分まで目を配ってきた「人の手」によって支えられていることは忘れがちだ。当たり前のように時間通り移動し、スイッチ一つで温かな明かりを灯すことができる。2024年はインフラの大切さと技術継承の重要性を痛感させられた一年だった。
仙台放送