『買物ブギー』には歌詞が頭に入らないシヅ子が漏らした言葉も取り入れた?初年度だけで売り上げ45万枚<ブギウギ路線代表作>誕生秘話
◆パフォーマンス 1950年2月、レコーディング直後に、大阪梅田劇場「ラッキー・サンデー」公演で唄って、観客に大ウケした。 この初演の時は、ミュージカル仕立てで6分もあったという。 服部が指示するまでもなく、ステージでは、シヅ子はエプロン姿に下駄履きスタイルを考案、下駄でタップを踏むというユニークなダンスを披露。 根っからの舞台人であり、芸人でもあるシヅ子は、「東京ブギウギ」の振り付けも自分で考えたが、この時のコミカルなダンスは、喜劇王エノケンの薫陶を受けたことも大きいだろう。 その笠置のパフォーマンスが映像で堪能できる。 レコード発売直前、5月21日公開の松竹映画『ぺ子ちゃんとデン助』(瑞穂春海)のなかでは、マーケットの二階建てのセットを縦横無尽にリズミカルに動き回りながら、パワフルに歌って、まさにショウ・ストッパーとなった。 歌詞の通りのシチュエーションで、買物かごを下げたぺ子(笠置)が、マーケットの魚屋のおっさんに「これなんぼ」とさんざん聞いたあげく「シャケの缶詰おまへんか」とクサらせる。 現在ではコンプライアンスの関係から、CDではカットされている歌詞も、ヴィジュアル込みで描かれていて、サゲにあたる部分まで、映像化されている。
◆『ぺ子ちゃんとデン助』 この『ぺ子ちゃんとデン助』は、前年の『脱線情熱娘』同様、服部&笠置のソングブック映画となっているのが楽しい。 横山隆一が毎日新聞に連載した漫画の映画化で、売れないカストリ雑誌「フラウ」の編集者のペ子と、給仕のデン助(堺駿二)があの手この手で、ヒット企画をものにしようとするコメディ。 上映機会の少ない作品だが、2013年の第六回「したまちコメディ映画祭」で上映された。 コロムビアの歌手・高倉敏が、覆面歌手に転身する警官役で出演。 横山隆一画のタイトルバックに流れる主題歌「ペ子ちゃんセレナーデ」(作詞・東美伊、藤浦洸)は、劇中でもリフレインされる。 銀座のビルの屋上で、ストレス発散でぺ子がシャウトする「ラッパと娘」、同名舞台の主題歌「ラッキー・サンデー」は未レコード化の傑作ソング。 さて「買物ブギー」の4分に及ぶミュージカル・シークエンスは、なんと映画のラストで、もう一度リフレインされる。 同じ曲がリフレインされることがあっても、同じテイクの映像をリプライズで使用することは前代未聞。 それほどインパクトのある映像で、観客には強烈な印象を与えたことだろう。 この「買物ブギー」は、レコードの初回出荷で20万枚がすぐに完売して、コロムビアの記録では初年度だけで45万枚売り上げ、笠置シヅ子にとっては「東京ブギウギ」と並ぶ代表作となった。 1951(昭和26)年10月4日公開の大映京都『女次郎長ワクワク道中』(加戸敏)のラストシークエンスでも歌うが、時代劇なのに、笠置だけでなく、コーラス・ガール演じるおかみさんたちが買物かごをぶらさげて、下駄でリズムを踏んで踊るシーンが圧巻である。 ※本稿は、『笠置シヅ子ブギウギ伝説』(興陽館)の一部を再編集したものです。
佐藤利明
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