新時代に花開くか「令和デモクラシー」
「合意形成」と「リーダーシップ」どう両立
平成デモクラシーは、それまでの日本政治の弱点とされたリーダーシップの欠如という問題を克服した点で評価される。その一方で、与党内で政府を批判する声が抑えられたり、官僚が首相の意向を過剰に「忖度」したりする傾向も生まれてしまった。官僚が首相周辺に便宜を図ったとの疑惑が指摘されている森友・加計学園問題はその典型的な例である。 強いリーダーシップの副作用ともいえるこうした問題にどのように向き合うかが、令和デモクラシーの課題となろう。 必要な政策を断行し、公共の利益を実現するためには、強いリーダーシップはもちろん重要である。ただしそれはできるかぎり合意に基づいたものであるべきだ。多数決による強引な決定は、下手をすると国民を分断してしまう。また、現在世界各国でポピュリズムが跋扈しているが、これは国民の間に「敵と味方」の分断を持ち込むようなリーダーシップである。そうしたリーダーシップのあり方には警戒しなくてはならない。 そして、強いリーダーシップに対するチェック・アンド・バランスが必要である。第1に、国会による政府へのチェック機能を強化すべきである。憲法は国会に国政調査権を与えているが、それを有効に活用するためには国会の委員会運営を見直すことが必要かもしれない。常任委員会で与党議員も厳しく政府を追及することが多い英国の慣行が参考となろう。その他、首相の解散権に制限をかけることも検討されてよいのではないか。第2に、官僚の専門性や中立性を尊重していくことも重要だ。官僚が政権の意向にとらわれることなく中立的・専門的に政策案の選択肢を提示し、それに基づき政治家が決定する仕組みを根付かせるべきである。 戦後昭和のデモクラシーは合意形成に傾き、リーダーシップには欠けていた。反対に平成のデモクラシーでは強いリーダーシップは実現したが、合意形成はおろそかにされた。二つのデモクラシーを教訓に、合意形成と強いリーダーシップの両立をいかに図っていくかが令和の日本政治の課題である。
------------------------ ■内山融(うちやま・ゆう) 東京大学大学院総合文化研究科教授。専門は日本政治・比較政治。著書に、『小泉政権』(中公新書)、『現代日本の国家と市場』(東京大学出版会)など