カンヌで喝采!アニメ【化け猫あんずちゃん】W監督が制作裏話を語る
実写で描いたとおりにお芝居で泣ける作品
――こうして撮影された実写映像をアニメに落とし込む際に注意したポイントは? 久野 実写の印象にしたいという風には思っていました。その一方で、役者さんが透けて見えてしまわないように、アニメとしての良いお芝居を追究するようにはしています。実写の通りに描いていくと、どうしても生々しくなってしまうというのがあって。そこで何度も実写の映像を見直しながら「このぐらいキャラクターのテンションを上げた方が実写の温度と同じになるな」とか「ここは手をより強めに上げておくと動きが気持ちいいな」といったように、実写とアニメのお芝居を近付けながらカット単位で正解を探っていく作業を続けていった感じです。 ――背景映像の美しさも際立っています。 久野 キャラクターの作画までを日本で行い、背景美術と色彩設計、最終的な画面のルックを設計するコンポジット開発などはフランスのMiyu Productionsに担当していただきました。最初に美術監督&色彩設計のJulien(De Man)さんから「ポスト印象派の画家であるピエール・ボナールの絵がイメージにあるんだ」って言われたんです。実際に描かれたものを見てみたら光の感じが柔らかく綺麗で、ちょっとゆるいキャラクターたちとの相性もすごく良かったんですよ。この組み合わせは私では思いつかないものでしたので、どのような映像が出来上がるのかすごい楽しみになりました。 ――完成映像をご覧になっての感想をお聞かせください。 山下 一番嬉しかったのは、アニメになってもキャラクターのお芝居で泣けたことですね。僕が意図した実写でのお芝居から、アニメに置き換わってもしっかりと感動するシーンに仕上がっているのはすごいなって思いました。 久野 やっぱりロトスコープという珍しい手法で制作した映像ということもあって完成するまで「どうなるんだろう?」っていう不安がずっとあったんです。なので実際に完成した映像を見て初めて「こういう作品なんだ」っていう感想を持てるようになりました。初めての驚きとチャレンジがすごくたくさんあった作品だなって、今改めて思っているところです。良い経験をさせてもらいました。 ――最後にファンの皆さんにメッセージをお願いします。 山下 ありそうでなかったというか、この夏に劇場で見るのにふさわしい新感覚のアニメに仕上がりました。絶対に皆さんの想像を裏切る映画になったと思います(笑)。ビックリ箱じゃないですけど、驚きと楽しさがいっぱい詰まった作品になっていますので、ぜひ劇場に足を運んでみてください。 久野 なんだか見ていて安心出来ない映画になっています(笑)。夏休みの体験としてちょっと狐につままれてほしいというか、この作品でしか味わえない不思議な体験を皆さんにも味わってもらえたなら嬉しいです。
ライター 川畑剛