現役自衛官が、闇バイトで強盗犯になるまで「クリスマスに遊ぶマネーがほしいです」
ギャンブルの借金430万円が上司にバレて所属部隊から脱走
曹は一般の軍隊における下士官に相当し、3曹は自衛隊では下から4番目だが、努力次第で幹部に昇進する道も開けている。その平均年収は360万円程度というから、20代前半の中桐にとって、経済的にもそれほど悪い条件ではなかったはずだ。 ところが、中桐は、競艇などのギャンブルにハマり、多額の借金を抱え込むことになる。中桐の裁判では、次のような経緯が明らかになっている。 「検察側の冒頭陳述によると、ギャンブルなどでつくった約430万円の借金が上官に発覚し、中桐被告は2022年11月、無断で自衛隊の所属部隊から脱走。SNSの闇バイトを検索し、「ミツハシ」と名乗る指示役と知り合った。ミツハシは今村(磨人)被告とみられる。」(読売新聞2023年7月26日付。カッコ内は筆者引用) そこからの転落は瞬く間だった。2022年12月、「ミツハシ」の指示どおりに高級腕時計を売却することで、約55万円の報酬を手にしたという中桐。それは直前に永田らが広島市の時計販売買取店に押し入り、奪った130点以上の腕時計(2439万円相当)だった。 ミツハシから、それに続く「仕事」として持ちかけられたのが、リサイクルショップを襲う実行犯たちの運転役だったのだ。自衛隊を抜け出してから、千葉県警に逮捕されるまでわずか49日間の脱走劇だったことになる。
「クリスマスに遊ぶマネーがないです」
裁判では、検察側によって、中桐とミツハシが通話アプリ「テレグラム」を介して行ったやりとりも再現された。そこから、あまりにも無防備に闇バイトに足を踏みこんでいく中桐の姿が浮かびあがる。 中桐「クリスマス遊ぶマネーがないです」 ミツハシ「仕事あるから心配ないよ」 中桐「すぐありますか。仕事が中毒です」「今ばりばりほしいです」 (読売新聞2023年7月26日付から筆者が再構成) リサイクルショップ強盗の運転手役を持ちかけられた際のやりとりでも、犯行を前にした戸惑いや罪悪感は読みとれない。 ミツハシ「店舗の見張りと当日のドライバー。成功報酬50万円」 中桐「どこを襲うんですか」 ミツハシ「千葉の買い取り店」 中桐「お金奪って安全運転で終わるやつですかね」「安全運転で頑張ります」 (読売新聞2023年7月26日付から筆者が再構成)