生成AI活用の課題に迫る DXによる改善余地が大きい業種とは?
生成AI貢献度の高い業種
――今後、生成AIによって変化する余地が大きい業界について、砂金社長はどのように見ていますか。 実は当社が事業をする上で、どの領域を軸に展開していけば貢献度が高いかを整理したマップがあります。縦軸を「業務難易度(個別性・複雑性)」、横軸を「製品・サービス数」にしたもので、右上の「製品・サービス数が多く、高難易度」にあたる領域がDXによる変化余地が大きい業種と見ています。 ここには「保険」「家電・IT機器」「カード」「銀行・証券」といった業種が来ていて、「通信」「携帯キャリア」が続きます。これらの業種は、大学を卒業した新卒社員が即戦力になることが難しく、一定のトレーニング期間があり、業務知識や資格を取得した上でないと処理できない、難易度の高い業務が多く占めます。 これらの業種は製品やサービス数も豊富で、中には期間限定のキャンペーンを設けるものもあります。こうしたものは製品やサービスごとにルールが複雑で、人間の社員であっても正しく処理したり、正しい知識に基づいてユーザーサポートをしたりすることが難しいのです。 こうした業種こそ、AIが膨大なルールを学習することによって、効率的かつ正確にユーザーに対応できると考えています。 ――自治体業務も専門性が高そうな印象があります。 自治体業務の場合は、保険やカードなどといった業務と比べると、やや難易度は下がると思います。というのも、内容は高度な一方、例外的な期間限定の処理が比較的少なく、定型的な処理も多いからです。業務の内容が法令などで明文化され、それに沿った対応になります。ただ、業務の種類は豊富ですので、保険やカードといった業種群に次ぐ形で貢献度が高い領域だと見ています。 ――定型業務の方がAIによる効率化がしやすい印象もありますが、生成AIの登場によって、非定型業務にも適用できるようになってきたということでしょうか。 そうですね。生成AIが登場する前は、右下の「定型的だが、種類が豊富」な「自治体」や「小売」「旅行代理店」といった業種が効率化しやすいと考えられてきました。右上の保険やカードのような、あまりにもばらつきが多い業務はAIによる対応が技術的に難しいと考えられていたのです。しかし、生成AIが出てきたことにより、できることの幅の自由度が広がりました。 また、生成AIによって効率化できれば、その分従業員は、リスキリングや他のクリエイティブな業務に時間を費やすことができます。そうすれば一層生成AIによって生産性向上が期待できる業種でもありますので、効果が大きいと考えています。 ――そうなると、Gen-AX が目指していく業種も、保険、カード、銀行・証券、家電・IT機器のあたりになるわけでしょうか。 初期的にはこれらの業種への貢献度が高いとは思っています。しかし、その他の業界も、われわれの業界理解が進めば、貢献余地が大きくなる可能性もあります。 どの業種にしても、業務における生成AI活用を進めたことによって「この仕組みがないとその会社の業務が回らない」といった程度のインパクトを与えていきたいです。われわれが今になってPCなしで仕事できないのと同様に、生成AIなしの元の手作業には戻れないところにまで社会に浸透させていきたいですね。 (河嶌太郎、アイティメディア今野大一)
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