東邦センバツVの軌跡/中 全員野球の勝利 支えた「日替わりヒーロー」 /愛知
<第91回選抜高校野球 センバツ高校野球> 「打の東邦」を見せつけた大会だった。第91回選抜高校野球大会で東邦打線は、5試合で計50安打32得点(いずれも今大会最多)をたたき出した。3本塁打を放った石川昂弥主将(3年)、4割超の打率を残した4番・熊田任洋選手(同)が引っ張ったのは言うまでもなく、この2人以外の選手たちの活躍があったからこそつかみ取れた「頂点」だった。 【熱闘センバツ全31試合の写真特集】 石川、熊田両選手はともに昨春の90回大会にも出場しており、対戦校の指揮官らは警戒する選手として口をそろえて2人の名前を挙げた。新チーム結成当時から「石川と熊田のチーム」と周囲に言われることも少なくなかったが、その言葉が他の選手の闘志に火を付けた。 1回戦では、富岡西(徳島)のエース、浮橋幸太投手(3年)の制球力の高さに打線が苦しむ中、「冬の間に一番成長した」と森田泰弘監督(60)が評価する松井涼太選手(3年)が勝ち越しの一打を放った。 続く広陵(広島)戦では、吉納翼選手(2年)、長屋陸渡選手(3年)の連打などをきっかけに16安打12得点の猛攻で勝利。準々決勝の筑陽学園(福岡)戦は成沢巧馬選手(同)の二塁打で2点を先制した後も六回に松井選手、河合佑真選手(同)、山田航大選手(2年)がそれぞれ二塁打を放ち、一挙5点を挙げて試合を決めた。 準決勝は接戦だった。明石商(兵庫)と中盤まで投手戦を展開。七回まで再三のピンチに見舞われながらも粘りの投球を見せていた石川主将を援護しようと吉納選手が均衡を破る3点本塁打を放ち、勝利をもぎ取った。 そして迎えた決勝の習志野(千葉)戦。この日の主役となった石川主将は2回戦で本塁打を放って以降は、投球に集中していたこともあり、準決勝まで打率1割5分7厘と打撃では調子を崩していた。「自分が打てなくてもみんなが打ってくれると思うと力が抜け、思い切りプレーできた」と、支えてくれた仲間への恩返しとばかりに2本塁打を放ち、投げては相手打線に二塁を踏ませぬ完封劇を演じた。 大会前の宣言通り、平成最後の優勝を飾ったチームを指揮した森田監督は言う。「石川、熊田がマークされる中、他の選手たちが活躍し、日替わりヒーローが生まれたのが勝利につながった。全員野球で勝ち取った優勝です」【高井瞳】