ちょっと古いデルタでオシャレなのはこれ! クラスレスのラグジュアリー・カーとして誕生した3代目は、どんなランチアだったのか?
ランチアって、実は高級ブランドなんです!
中古車バイヤーズガイドとしても役にたつ『エンジン』蔵出し記事シリーズ。今回は2008年9月号に掲載されたランチア・デルタのリポートを取り上げる。日本撤退以来、長く空白が続いたランチア・ブランド復活の狼煙となった新型デルタ。右ハンドル仕様も用意されるというわけで、何年もの間お呼びのかからなかった日本のメディアも試乗の機会を得た。市場の特殊性を本気で考えて開発中という日本仕様の完成はまだだが、欧州試乗向けの新型に乗って、それが待つに値するクルマだということが分かった。という言葉でリポートは始まる。 【写真7枚】高級な革内装、デザインも素敵、中古車の価格もお手頃、グッときます! 写真を見ると欲しくなる(笑) ◆謳い文句の8割がたは真に受けていい 「ほかのクルマとは違う」というのが新型デルタのキャッチフレーズだ。 Cセグメントとひとつ上のDセグメントの、プレミアム・モデルを含むすべてのクルマをライバルとして想定しつつ、それらのどれとも違う立ち位置をとることに成功したと、ランチアは力強く宣言している。 その謳い文句の8割がたは真に受けていいと、試乗して僕は思った。 すでにイタリア市場では6月21日から販売が始まり、お膝元のトリノでは街のいたるところに登場を告知するビルボードが掲げられている。ザ・パワー・トゥ・ビィ・ディファレントのキャッチが誇らしげだ。リチャード・ギアがハリウッドから乗り出してチベットへとワープするテレビCMもかなりイケているし、リブラなきあとを任されることになった新型デルタは、スマッシュヒットを飛ばしそうな予感がする。じじつ、発売3週間で20万人がディーラーに足を運び、7000人がテスト・ドライブの申し込みをしたというから、出足も絶好調である。 イタリア以外の欧州各国でもバカンス明けの9月から順次販売が立ち上がることになっていて、輸出にもいままで以上に力を入れると鼻息も荒い。ランチア・ブランド全体のプロモーション戦略を見直して以降、イプシロンとムザの輸出実績は急激な右肩上がりのカーブを描いており、デルタが加わった2008年の目標は8割増を目指すと豪語するほどだ。 2009年半ばには右ハンドル仕様デルタの生産が始まり、90年代はじめに撤退して以来、長い間ランチア不在が続いていた英国や日本(さらにはオーストラリア)への正規輸出が始まるのも大きなニューズである。イプシロンやムザにも次期モデルでは右ハンドル仕様が設けられ、ラインナップに加わるという。 日本にやってくる右ハンドルのデルタは、開発が最終段階に入っている1.8リッター直噴ガソリン・ターボの200ps仕様にアイシン製6段オートマティック(トルコン付き)を組み合わせたパワー・ユニットが搭載されるという。期待大だ。 ◆素晴らしい乗り心地と静粛性 今回、トリノで試乗することができたのはもちろん左ハンドルで、エンジンは150psの1.4リッターターボ過給ガソリン、変速機は6段MT。だから、来るべき日本仕様を占うには少々難しいのだけれど、大筋で新型デルタがどのようなクルマかを把握するのには不足なかった。 ひとことでいうと、きわめて快適なクルマである。広大な後席居住スペースを備えたクラスレスな高級車を目指すコンセプトに説得力がある。 試乗した個体はオプションの18インチ・タイヤを履いていたにもかかわらず、硬いエッジが立つことは一切なく、2.7mにも達する長いホイールベースを活かしたフラットで柔らかい乗り心地を実現している。装着タイヤはサイズを問わず、乗り心地を重視した高級なそれが全面的に採用されていて、それがハーシュネスを遮断するのに一役買っているに違いないが、標準装着されている電子制御ダンパーの効果も大きいはずだ。モード切り替えなどを一切もたず、完全な黒子として使うやり方も素晴らしい。 入念な遮音設計が効いて、静粛性もきわめて高い水準に達している。ロード・ノイズや風切り音もよく押さえ込まれている。試乗した日は外気温が30℃を超える暑さだったから、オートエアコンがほとんど最強モードで作動しつづけていたが、その送風用シロッコ・ファンの音がいちばん大きかった。試しにと出してみた最高速度付近でも空調の音が最大の音源だったのだから、この静粛性の高さは本物だ。 1.4リッターユニットを1基のターボで過給して150psを搾り出すことから、ある程度のターボラグはやむなしかと予期したけれども、6段MTを適切に扱う限りにおいては、扱いにくさをほとんど覚えなかったから、個人的には、この150psか、あるいは過給の仕様違いで用意されている120psのガソリンで十分と思った。しかし、ATとの組み合わせは設定されないので、日本へは輸入されそうもないのが残念。 とにもかくにも新設計1.8ターボの完成が待ち遠しいデルタである。 文=齋藤浩之(ENGINE編集部) 写真=フィアット・グループ・オートモビルズ・ジャパン (ENGINE 2008年9月号)
ENGINE編集部
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