夢の強要を助長?キャリア教育や探究の落とし穴 大人は好奇心を保護してソーシャルサポートを
「キャリア・パスポート」や「探究」が受験の道具にされる懸念
一方、学校現場では、2020年度から新たな学習指導要領が実施され、探究学習に代表される主体的な学びが推進されるようになるなど大きな変化があった。また、小学校は2022年3月、中学・高校では2023年3月からキャリア教育の手引きが改訂されている。その流れの中、興味・関心の深掘りが推奨されており、探究を深めて進路選択につなげたり、総合型選抜などで合格することを目指したりする動きも増えている。 こうした変化について、ドリハラの観点から高部氏はどう見ているのだろうか。 「子どもを持つ親としてキャリア教育の推進を実感したのは、学習指導要領の改訂に伴い、『キャリア・パスポート』が導入されたことですね。よくも悪くも病院のカルテのようで、子どもの状態や、目標とその達成度、その過程でどんなことが身に付いたのかなどを記入・管理するものになっています。確かにわかりやすいのですが、夢を決め逆算して計画的に人生を歩んでいくロジカルな生き方だけが是とされるのだと、子どもたちが受け取ってしまうのではないかという懸念があります。パスポートというネーミングも『これを持っていないと通過できない感』があり、ちょっと重い。新たなキャリア教育の手引きもPDCAが回っていればよいというように読める内容だと感じます」 さらに高部氏は、キャリア・パスポートが受験の道具にされてしまうのではないかと危惧しており、探究学習についても懸念を示す。 「どういった内容を探究学習で扱えば難関大学への合格確率を高められるのかと、戦略的に探究学習に取り組んでしまう生徒や学校が増えると考えています。すでに受験産業も絡んできていますので、本当に興味や関心に基づいた純粋無垢な探究学習なのかという点には疑問符がつきます。こうした状況から、ドリハラが増えているのではないかと感じています」
夢を細かく問われない「学業優等生」にも課題
ドリハラを受ける子どもたちの心配な反応には、4タイプあると高部氏は言う。やりたいことを決められず夢に出合える日を待ち続ける「待機型」、慌てて夢をひねり出す「即席型」、大人が喜びそうな夢を適当に設定する「捏造型」、夢について細かく聞かれることがない「免除型」だ。 この中で、待機型、即席型、捏造型はわかりやすい被害者だが、免除型にも大きな課題が潜んでいると高部氏は指摘する。 「中高大とスムーズに進んで社会人になっていく免除型は、勉強ができるいわゆる優等生に多い傾向です。例えば、夢は何かと聞かれて『東大合格』と答えるような生徒に対して学校の先生は反対しません。その夢をなぜ持ったのか、東大に入ってその先に何をするのかなどを点検してもらえないのです。実はそうしたノーチェックな子たちほど希望の大学や企業に入った後、本当に自分は何をしたかったのかと壁にぶち当たるケースが多い。受験の勝者こそ、夢の取り扱いについて注意すべきだと思います」