改憲論議は一気に「厳冬期」へ 自民、審査会長を立民に譲渡 関係者「信じ難い」
自民党が、衆院憲法審査会の会長ポストを憲法改正に後ろ向きな立憲民主党に譲ったことで、改憲論議は一気に「厳冬期」に突入した。自民が白旗を上げた背景には、先の衆院選で改憲勢力が発議に必要な3分の2(310議席)を下回ったことに伴う諦めがある。ただ、石破茂首相(自民総裁)は衆院選直後に改憲への意欲を口にしていただけに支持層のさらなる自民離れを促しそうだ。 【表でみる】主要政党の公約などにおける憲法に関する主な主張 「びっくりした。にわかには信じ難い」。憲法問題に深く関わってきた自民の閣僚経験者は8日、憲法改正を「党是」に掲げる自民が、改憲論議のキーマンとなる審査会長ポストまで野党側に譲り渡したことに戸惑いの声を漏らした。 議事進行などで大きな権限を持つ審査会長は平成24年の政権奪還以降、自民が独占してきた。要職を手放した理由について、自民幹部は「3分の2の勢力を失ったので改憲論議は進まなくなった」と説明した。 自民重鎮は「立民の審査会長が理由もなく改憲論議を止めた場合、『立民に国政を担う資格があるのか』と批判する」と牽制(けんせい)。一方、立民関係者は「改憲には結びつかないので憲法審は動かす」と余裕の表情を浮かべた。 もっとも、国会では審査会長を譲らなくても憲法審で改憲論議を深めることは可能だったとの見方が大勢だ。日本維新の会や先の衆院選で躍進した国民民主党が引き続き、議論に応じる構えを示していたためだ。 自民関係者は、国会運営を円滑にするために自民の国会対策委員会が審査会長ポストを立民に譲ったのではないかと分析。「自民国対はこれまでも憲法を『鬼っ子』のように扱ってきた。改憲論議の最大のブレーキ役だった」と不信感を口にした。 石破首相は衆院選から一夜明けた10月28日の記者会見で、「結党70周年を控える中、党是である憲法改正を前に進めていく」と訴えていた。党首の意欲に逆行するかのような自民の対応について、維新幹部は「改憲を前に進められないことへの批判や党是から逃げたのだろう」と突き放した。(内藤慎二)