「人生最大の失敗は結婚だよ」と言う夫。離婚は幸せな未来への第一歩? それとも寂しい老後に繋がっている?【書評】
結婚って楽しいのは最初だけ? いやいや一生幸せでいるんだ! そう思っていたはずが、数年もすると変わってしまった夫に不満は募るばかり。夫の一言をきっかけに決断した離婚は幸せな未来への一歩だったのか、それとも寂しい老後への愚行だったのか? 【漫画】本編を読む
第25回手塚治虫文化賞短編賞受賞作『消えたママ友』の著者、野原広子さんが描く『人生最大の失敗』(はちみつコミックエッセイ)は、何となく今の生活に不満やモヤモヤがある人におススメしたい、人生を考え直すきっかけをくれる1冊だ。
結婚すれば幸せになれる。子どもがいれば幸せになれる。離婚すれば幸せになれる。世間一般的な価値観で、◯◯さえすれば幸せになれると思っている人もまだまだいるのが現実。社会のレールに乗っていれば失敗しないだろうと、自分の頭で考えないとどうなってしまうのか。
優しい彼と結婚し一女をもうけたエリコは、結婚式でおばから言われた「楽しいのは最初の3年くらい」という言葉を実感する日々。優しかった彼はいつの間にか偉そうな態度ばかりとるように。女友達と会えば夫の悪口大会だが、他の家から見れば自分たちも幸せに見えていることに少し安心する。 しかしやがて「人生最大の失敗は結婚だよ」という夫の言葉を耳にし、エリコは離婚を決意する。子どもが自立したことをきっかけに50代を前に離婚に踏み切ったエリコの自由や孤独、不安、それから恋や失敗をリアルに描く本作。嫌だった夫と離婚して自由になったエリコはどんな生き方を選ぶのか。
やっと自由になったんだからと、やりたかったことを叶えていくエリコ。ワクワクする気持ちが残っていたことに嬉しさを感じつつ、ひとりの寂しさに「何やってるんだろう」とふと思ってしまうときも。日常のいたるところで不安や孤独がふと顔を出す。
自分の好きなものって何だっけ? ひとり暮らしとなり、久しぶりに自分のためにご飯を作ろうと思ったエリコはふと考えてしまう。 いつも家族優先で我慢をしてきたことで、自分のことが分からなくなってしまったのだと思うと、エリコだけが犠牲になってきたように思える。しかし、家族のためと思ってしてきた我慢は、エリコだけでなく家族の笑顔も消していた。誰かの犠牲の上で成り立つ家族はいつバランスを崩してもおかしくないのだ。