6歳の次男はある日突然「ママに会いたくない」と口にした。それから10か月、わが子に会えていない
「モラハラ夫はある日突然モラハラを始めるわけではない」
綾さんと元夫は、仕事関係の会合で知り合った。綾さんは再婚だが、元夫は初婚。元夫は子どもを切望した。 「年齢的にも一か八かだと思ったので、まず妊活したんです。奇跡的に妊娠したので、籍を入れました」 元夫は子どもを授かったことを喜び、綾さんの実家から徒歩1分のところに家を買ってくれた。 「前の結婚相手には浮気や借金で散々な目に遭わせられたので、ポンと家を買ってくれる男気がうれしかった」 一方で、元夫はモラハラ気味で、お酒が入ると暴れる悪癖があった。豊かとはいえない生まれ育ちにコンプレックスがあり、それが刺激されるとキレる。逆境を乗り越え仕事で成功したタイプで、逆にいえばそれが自分の拠りどころなのか、綾さんが仕事で活躍するのをいやがった。 「面倒な性格だとわかってはいたのですが、愛情で包み込めば大丈夫、私が変えてみせる、と思っていたのです。完全に自分を過信していました……」 人を変えることなど不可能だ。一緒に暮らし始めて綾さんは、それを思い知ることになった。どんなに愛情を注いでも、元夫は満たされない。結婚してすぐ次男が生まれ、綾さんが子育てにかかりきりになったことも、元夫の心を不安定にした。 「両親との愛着に課題があり、自己肯定感が低いので、人の愛情を信じられないのだろうと私は分析しています」 前編記事では綾さんのご主人が「モラハラ夫」の片鱗を見せるまでの経緯を聞かせていただきました。後編ではモラハラ夫が一気に「誘拐夫」に変貌する経緯をお話いただきます。
ライター 上條まゆみ