横浜流星、“新しい大河”『べらぼう』で届ける挑戦し続ける姿勢 「皆さんに愛される蔦重を」
2025年を明るく照らすーー。NHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』のビジュアルが発表されたときに最初に思った印象だ。その真ん中にいたのは、主人公・蔦屋重三郎(通称:蔦重)を演じる横浜流星。数々の作品で名演を見せてきた横浜だが、蔦重はこれまで演じたどのキャラクターよりも明るく激しい“陽”の人物だ。「誰かのため、何かのために動ける」蔦重に魅力を感じたという横浜は、どんなアプローチで役作りをしたのか。放送を前に話を聴いた。 【写真】横浜流星インタビュー撮り下ろしカット(全5枚)
蔦屋重三郎は「人間としてとてもリスペクト」
ーー『べらぼう』の出演オファーを受けた時の気持ちを聞かせてください。プレッシャーなどはありましたか? 横浜流星(以下、横浜):大河ドラマは、もちろん目標の一つとしていた作品ではありましたが、それよりも「なぜ自分に?」というのが大きかったかもしれないです。多くの方が、NHKの作品に携わって大河ドラマの主演になられることが多いと思うのですが、僕はNHKの作品に携わったことがありませんでした。初出演初主演。だから、なぜ自分を選んでいただけたのかは、今でも疑問に思っていますけど(笑)、選んでいただいたからには責任と覚悟を持って作品を届けたいと思いました。ここまで、約5カ月間作品と向き合って感じているのは、いい意味で大河ドラマらしくない、新しい大河ドラマになっているのではないかということ。大河ドラマのファンの方々はもちろん、今まで観たことがないという方々にも楽しんでいただける作品になれば嬉しいですし、それが自分の使命なのかなと思っています。プレッシャーに関しては、どの作品も全て100%でやっていますので、大河ドラマだからというものはないです。でないと他の作品にも失礼ですし、そういう気持ちでいます。 ーーどのような部分が“新しい大河ドラマ”と感じたのでしょうか? 横浜:いい意味で、全てが大河ドラマらしくないんです。もちろんスケール感はあるのですが、すごく派手な戦がないからこそ“商いの戦”になっていて、ビジネスストーリーでもあり、喜劇でもあり。展開もすごいスピーディーなのに、エンタメになっている。あとは、何と言っても、(脚本の)森下(佳子)先生の力が大きいと思います。吉原が舞台で、これまでの大河ドラマの中でもよりたくさんの人々がいるのに、森下先生が人間をしっかり描いてくださるから、登場人物みんながいきいきと魅力的に輝いている。そういう部分でも、なんとなく自分の中にあった大河ドラマの“固い”イメージがないんです。だからこそ、これまで大河ドラマや時代劇を観ていない方だったり、自分と同じ世代の方々にも観てほしい。そのためにどういうふうに届けられるかをスタッフの方々とも話しています。 ーー蔦重こと蔦屋重三郎は、一般的にあまり知らない人も多いかと思いますが、横浜さんから見た蔦重の才能と魅力を教えてください。 横浜:蔦重は誰もが知っている人物ではないかもしれませんが、本当に魅力的で知れば知るほどすごい方なんです。江戸を豊かにして“江戸のメディア王”や“出版王”と呼ばれていました。今で言うと、出版社の社長であり、プロデュースも行い、営業も行い、それを全て自分で担う。本当に多彩な人物だなと思っています。情に厚く、責任感があり、挑戦して挑戦して、失敗してもへこたれないメンタルがある。これらは成功者の方々の共通点としても多く挙げられる点だと思うのですが、蔦重の何よりの魅力は“誰かのため”に動けること。自分のためではなく、彼の行動はすべて、吉原という場所や女郎や絵師、そして世の中のためになんです。そういうふうに思える人間は強いなと。そう思うことで何倍もの力にもなりますし、協力も得られるので、僕も自分だけではなく誰かのためにも頑張れるような人間でありたいと思います。蔦重は共感性が高い人物で、観てくださる方々の目線にいるような人物なので、感情移入しやすいと思っています。人間くさいし、すごく情けないところもあるんですけど、行動力が凄まじいので、みんながこうしたいなと思うようなことができる人でもあると思います。第1回で田沼意次(渡辺謙)と会うシーンがあるのですが、今で言うと、一国民が総理大臣に向かって一意見言うようなもの。彼のその行動力には驚かされますし、その理由を深掘りした時に“誰かのために”になる。人間としてとてもリスペクトしています。 ーー蔦重を演じるにあたって、監督から言われたことや大先輩の渡辺謙さんから学ばれたことはありますか? 横浜:監督からは基本、「明るく」と言われています。というのも、僕は朝が弱くて……(笑)。自分の中でこれぐらいだろうと思ってやっても、ちょっと暗いと。ここが一番の課題です。朝が強くなり、明るくできればいいなと思ってるんですけど。明るさは蔦重の良さでもあるので大事にしてます。(渡辺)謙さんからは、この作品の前に映画『国宝』で親子役でご一緒しているのですが、その時に食事に行っていろいろとお話をさせてもらいました。当時、僕はまだ27歳だったので、「ちょうど流星と同じ年に俺もやったよ」と言われて、「とにかくまっすぐ全力でやればいい」と力強い言葉をいただきました。その言葉を信じ、今は蔦重として生きています。現場でも謙さんの佇まいやお芝居を見て学ぶことが多いので、あまり共演シーンはないですが、その時間は大切にしています。 ーー共演シーンの多い花の井役・小芝風花さんについても聞かせてください。台本を読むと、蔦重はアイデアマンではあるのに、花の井の気持ち(蔦重への恋心)に気づかないもどかしい場面もありました。 横浜:吉原の男女には「恋愛感情を持ってはいけない」という掟があるので、それが蔦重には植え付けられてる。その鈍感さが彼のいいところでもあるので、だからこそ存分に鈍感にやってます。 ーー小芝さんと何かお話はされましたか? 横浜:彼女も現場で花の井としていてくれるので、具体的な話はせず、芝居を通して「ここがやりにくいか、やりにくくないか」などの相談をしながら、監督とも一緒に作っていってます。 ーーそのあたりがドキドキさせてくれるポイントとなるのでしょうか? 横浜:蔦重がドキドキさせられるのかわからないですけど、皆さんにツッコミながら観ていただけたらうれしいです。