侍Jの1次ラウンド3連勝の裏に早撃ち殺法
1次ラウンドの3連勝を通じて浮き彫りになったひとつのデータがある。 待球ではない早撃ちが成功している傾向である。この3試合で、侍ジャパンは計30本のヒットをマークしたが、そのうちファーストストライクを仕留めたものが27%、ワンストライクから次のストライクを打ったのが50%。逆に追い込まれてからヒットにしたものは23%しかない。また、ヒットにするまでにかけた球数の統計を取ると、2球目までに仕掛けてヒットしたものが、全体の40%を占める。3球目までなら53%。積極的な侍Jの“早撃ち殺法”が功を奏しているのである。 その典型例が松田と中田だ。 打率.545、1本塁打、5打点で「WBC男」となっている松田は、「強化試合では、結果にこだわるあまりボールを見すぎて自分のスタイルを失っていた。超積極打法でいくことにした。球種やコースにこだわらずに自分のタイミングでファーストストライクから打ちにいく」と語っていたし、中田も、「今日は、負けている展開じゃなかったし、三振でもいいんだという気持ちでしっかりと最初から振りにいった」と言う。 この日の一発もカウント1-0からのファーストストライクだった。 日本のレギュラーシーズンの野球と、典型的に違うのは、球数制限のあるWBCの野球に、細かい配球の駆け引きはほとんど見られない、ということである。 カウント球イコール勝負球。得意なボールをファーストストライクに使ってくる。 キューバ、豪州、中国に150キロ級のストレートや、手も足も出ない特殊球、あるいは驚くほど精密なコントロールを持つ投手は一人もいなかった。しかも、細かく継投してくるので、一打席ごとにピッチャーが変わるということもザラ。そこには、俗に言う、前の打席の結果球から逆算するような配球の駆け引きなどはなく、とにかくストライク先行を意識して、ストライクゾーンで勝負してくる。特に低めの「ゴロゾーン」といわれるコースに、いかにキレのあるボールを動かすか、をテーマにしている投手が多い。 だからサイン交換に手間取るような時間はなくテンポが早い。 そういう相手に慎重になりすぎて追い込まれると、ストライクゾーンを広げなければならないので、逆に、そのボールにひっかかるケースが増えるのである。だが、早仕掛けだと、そこまでストライクゾーンを広げてはスイングにいかないので、必然、ミートの確率が上がる。 メジャーリーガーの青木が、松田に「海外のピッチャーに捨て球はほとんどないぞ」とアドバイスしたというが、相手もどんどんストライク勝負をしてくるので、早撃ち策は利にかなっているのである。