「イワシの舞う島」と呼ばれた古里、かつての活気取り戻すには…観光案内所を整備した30歳の挑戦
NPO法人しまうら未来開発プロジェクト 清田潤代表(30)
日向灘に浮かぶ宮崎県延岡市の離島・島野浦島に9月、観光案内所が誕生した。「多くの人に島を知ってもらい、活気を取り戻したい」。そんな思いを抱き、施設を運営するNPO法人の代表を務めている。 【写真】人口2000人の村が陸上の「聖地」に
同市の浦城港から高速艇で約10分の島では巻き網漁が盛ん。沖合には豊かな漁場が広がり、「イワシの舞う島」と呼ばれた。朝、港は人であふれ、秋祭りは男衆が激しくみこしをぶつけ合う「けんかみこし」が見どころだった。
小中学校を島で過ごし、「僕も大人になったらみこしを担ぎたい」と憧れた。宮崎市内の高校を卒業後、長崎県の大学を経て22歳で島に戻り、親が営む巻き網漁の会社に入った。だが、少子高齢化のうねりを受けた島の漁業は担い手不足が慢性化し、力を失っていた。戦時中に2300人ほどだった島民は現在約660人。中学を卒業して以来の古里にかつての元気はなかった。
島ではインドネシアからやって来た若者の姿が見られる。清田さんが従事する巻き網船も外国人は今や貴重な人材だ。「このままでは人がいなくなり、島で生きていくことはできなくなる。どうにかしないと」。仲間に不安を打ち明けると、島の将来を案じる声が次々と上がった。
日豊海岸国定公園のリアス式海岸に囲まれた島では、国内最大級とされるオオスリバチサンゴの群生や、絶景で知られる遠見場山などがある。だが、こうした海や山を観光振興に生かそうとする島民の動きはこれまでほとんどなかったという。
「活気を取り戻すには島外の人たちに島のことを知ってもらい、来てもらうしかない」と考え、仲間たちと情報発信拠点となる観光案内所を整備することを決めた。開業費用を調達するため、インターネットで資金を募るクラウドファンディングを実施すると、約1か月間で目標の100万円を上回る約150万円が島の内外から集まった。
「多くの人が島を応援してくれていると感じ、うれしかった」。今年5月にNPO法人を設立した。