「僕たちテレビは自ら死んでいくのか」相次ぐ大物テレビマンの独立だけではないテレビ局を巣食う「組織の論理」の息苦しさ
松本人志とお笑いとテレビ#2
ここ数年、地上波テレビ以外の映像コンテンツの可能性が大きく広がっている。一部の有名なテレビマンが独立する動きが加速しているが、テレビ局内ではいったい何が起きているのだろうか。 【画像】2人の優秀なテレビマンが退職したテレビ局 『松本人志とお笑いとテレビ』(中央公論新社)より一部抜粋・再構成してお届けする。
テレビ局を飛び出すテレビマンの増加
右肩下がりの苦境に置かれている昨今のテレビ業界では、テレビ局を離れて独立する人が目立っている。 もともとテレビ局の社員が退社や転職をすること自体は珍しいことではなかったのだが、近年は誰もが知るような人気番組を手がける現役のテレビマンが、続々と独立を果たして話題になっている。これは今までにはなかった現象である。 たとえば、2021年3月には『ゴッドタン』などを手がける佐久間宣行が、2022年6月には『ハイパーハードボイルドグルメリポート』などを手がける上出遼平が、それぞれテレビ東京を退社した。 2022年12月には『あざとくて何が悪いの?』『あいつ今何してる?』などを手がける芦田太郎がテレビ朝日を退社して、Amazon Studiosに転職した。同じく2022年12月には『有吉の壁』『有吉ゼミ』などを手がける橋本和明が日本テレビを退社した。 さらに、2023年2月には『家、ついて行ってイイですか?』などを手がける高橋弘樹がテレビ東京を離れて独立した。 彼らはいずれも退社時点で30~40代であり、制作現場の第一線にいる現役のテレビマンだった。当然ながら仕事に見合うだけの十分な収入は得ていただろう。多くの視聴者に愛される人気番組を制作してきたテレビマンであれば、会社側の期待も大きいだろうし、それなりの待遇も約束されていたはずだ。なぜそんな職場を捨てて、独立の道を選ぶ人が相次いでいるのだろうか。 もちろん個々人によって事情は異なるが、彼らの多くが語るのは「現場にずっと携わっていたいから」ということだ。 ディレクターとして番組を作ってきた人は、その仕事に愛着があり、長く続けていきたいと考えている。しかし、テレビ局という組織の中でキャリアを重ねると、管理職に就くことを求められたり、部署を異動することになったりする。その結果、現場に携わることができなくなってしまう。 現場にずっと残りたいのであれば、フリーのプロデューサーやディレクターとして外部から番組作りにかかわっていくしかない。そう考えて独立の道を選択するテレビマンはこれまでにも存在していた。 しかし、最近の相次ぐ大物テレビマンの独立の動きを見ていると、単にこれだけが理由ではないような気がする。