「僕たちテレビは自ら死んでいくのか」相次ぐ大物テレビマンの独立だけではないテレビ局を巣食う「組織の論理」の息苦しさ
「僕たちテレビは自ら死んでいくのか」
第一に考えられるのは、ここ数年で地上波テレビ以外の映像コンテンツの可能性が大きく広がったことだ。 一昔前までは、地上波のバラエティ番組のようなエンタメ系の映像コンテンツというものが、テレビ以外の場所にはほとんど存在していなかった。しかし、現在では数々の映像配信サービスやウェブメディアがあり、そこでエンタメ系の映像コンテンツが大量に作られ、配信されている。その制作費も地上波テレビに見劣りしないものだったりする。そこに可能性を感じて、地上波テレビ以外の映像制作の道を選ぶ人は多い。 また、あまり表立って語られることはないが、彼らがテレビ局の将来性に不安を感じたり、古い考え方についていけないと見切りをつけたりしている、という事情もありそうだ。その典型的な例であると思われるのが、テレビ東京を退社した上出遼平と高橋弘樹である。 上出は、テレビ東京在籍中に講談社の文芸誌『群像』2021年4月号で「僕たちテレビは自ら死んでいくのか」と題した文章を発表した。そこでは、彼がテレビ東京で音声コンテンツの制作を行った際に、社長の判断でそれがお蔵入りになってしまった、という件について書かれていた。 上出は、きちんとした理由の説明や議論の余地もないまま、何カ月も判断を保留された挙げ句、一方的にお蔵入りを告げられたことに不満を感じていた。そこで、事の顛末と自身の主張をまとめた告発文を『群像』に寄稿することにした。しかも、テレビ東京の事前チェックを入れず、個人的な判断だけでそれを公開していた。 当然、この行為は局内でも問題視されたに違いない。その後、程なくして彼はテレビ東京を退社して、ニューヨークへと飛び立っていった。現在では映像制作や執筆業などを行っている。 また、高橋弘樹は、退社する前に「日経テレ東大学」というYouTubeプロジェクトに携わっていた。 日経テレ東大学は、テレビ東京のグループ会社である日本経済新聞社の新事業として2021年に始まった。ビジネスや経済にまつわるニュースや情報を楽しく学べるというのがコンセプトだった。経済学者の成田悠輔、2ちゃんねる創設者のひろゆき(西村博之)などを起用して、ビジネスパーソンを中心に幅広い層からの支持を集め、チャンネル登録者数は100万人を超える人気コンテンツに成長していた。