パセラ“2代目”跡継ぎ娘、社長就任の知られざる舞台裏。カラオケ業界のコロナ苦境を乗り越えて
父に直談判した社長のポジション。目指すは「親孝行」と「働き方改革」
荻野さんは2009年にNSグループへ入社し、新規事業の立ち上げや赤字店舗の立て直しを担い、2018年に人事責任者(CHO)へ昇格した。 その後、2023年4月に父から社長を引き継いで、まもなく1年を迎える。 父の背中を見て学んだことや、経営者として意識していることについて、荻野さんは次のように語る。 「父は、今でも現役バリバリで、おそらく生涯現役の、仕事に心血を注ぐプロ経営者だと思っています。そんななか、苦しい時期だったコロナが明けて、さらなる事業拡大のために人材採用や社内の制度改革などを進めていくにはちょうど良いタイミングだったこともあり、思い切って『もしよかったら、自分に社長をやらせてもらえませんか?』と父に直談判したんですよ。 そうしたら、特に否定されることなく、すんなりOKをいただけて。以来、社長兼CHOとして仕事に取り組んでいますが、特に気負うことなく『会社のためになることは何か』を常に心がけながら、今までと変わらずに社員と接しています」 今後の展望を聞くと、「パセラのさらなる進化」と「新規事業の成功」を掲げる。両方を成し遂げるために重要なのは「人の力」だと荻野さんは説明する。 「省人化すべきところ、人の力で魅力を伝えるところを明確化し、『サービス業界に驚きと感動を与え、お客様に幸せと彩りを与える』というコアの部分にもう一度立ち返り、“人”がいることに価値を感じてもらえるようにしていきたいですね。 また、神奈川県葉山にある産後ケアホテルは、父の力を借りることなく、私自身が一から立ち上げた新規事業で、少しでも親孝行ができるようにしっかりと成長の軌道へ乗せていければと考えています」 パセラを運営するNSグループは、コロナ禍の厳しい3年間を取り戻すために、2023年から2025年までベースアップ(給与水準の引き上げ)を実施している。 「サービス業の世直し」を行うという志のもと、まずは従業員の働き方を改革し、満足度を高めていく狙いがあるという。パセラの未来を握る2代目社長の手腕に期待したい。 <取材・文・撮影(人物)/古田島大介> 【古田島大介】 1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている
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