パセラ“2代目”跡継ぎ娘、社長就任の知られざる舞台裏。カラオケ業界のコロナ苦境を乗り越えて
独自の付加価値を追求し「歌いに行く場所」から「ハレの日を過ごす場所」へ
料理の品数が少ない。カラオケの密室空間が怖い。画一的な接客で、サービスの品質が低い。 成熟した産業で顕在化していた“残念な部分”に目をつけ、そこを解消していくことで、事業成長の活路を見出したわけだ。 「カラオケという商品の構造上、本質的には時間を切り売りするビジネスであり、時間帯コストをかけられないがゆえに、サービス品質を高めにくい性質があります。 カラオケはあくまで“歌いに行く場所”なので、それでも十分なわけですが、パセラでは、お客様が大切な人と素敵な時間を過ごせるカラオケ店を目指しました。ちょっとした日常の“ハレの日”を演出できるプランを考案するなど、独自の付加価値を提供するように努めたんです」
“レンチン”ではなく専属シェフがその場で調理するこだわり
パセラといえば、「専属シェフが作る美味しい料理」が人気の理由のひとつに挙げられる。 “レンチン”で済ませるのではなく、レストランに引けを取らない本格的な厨房を全店舗に構え、出来立ての料理を届ける。 カラオケ店の料理とは思えない、質の高さと美味しさを追求したことで、顧客満足度の向上につながった。 なかでも、パセラ名物の「ハニトー」(ハニートースト)は、荻野さんが物心ついた頃から人気メニューとして存在していたそう。 食パン1斤にはちみつをたっぷりかけ、その上にホイップやアイスクリーム、フルーツを盛り付けた看板スイーツは、月間5000個以上の注文が入るときも。
ドラクエ、FF…コラボ企画が大きな話題に
また、パセラの成長をさらに加速させたのが、人気ゲームやアニメなどの世界観を再現した常設コラボ店舗の運営だ。 2010年に人気ゲーム『ドラゴンクエスト』(ドラクエ)とコラボした「LUIDA’S BAR(ルイーダの酒場)」は、大きな話題を呼び、今でこそ当たり前になった「企業と人気キャラクターやコンテンツ(IP)のコラボ」の先駆けとなった。 コラボ先を選定する上で、荻野さんは「断られることを恐れず、ダメ元で最も有名なドラクエからアプローチしたのが功を奏した」と振り返る。 プレゼンの機会では「スライム肉まん」や「ちいさなメダルチョコ」、骨付きチキンの「ギガンテスのこんぼう」などを作って見せ、何度も熱意を伝えた末に実現したのが、ルイーダの酒場だったそうだ。 その後、ドラクエとのコラボ以外にも次々と常設コラボ店舗を展開していく。 「ファイナルファンタジーエオルゼアカフェ」(ファイナルファンタジーXIV)や「モンハン酒場」(モンスターハンター)、「仮面ライダー・ザ・ダイナー」(仮面ライダー)、「サンリオキャラクターズ ガーデンカフェ」(サンリオ)など、さまざまなジャンルのIPとのコラボを実現させている。 コラボ企画は期間限定のものが多いなか、パセラの手がける常設型のコラボ店舗は、安定的な集客や認知度向上に寄与していると言えるだろう。