“GW初日”だから「昭和の天皇誕生日」は祝日として残された? 当時の国会審議からうかがえる“真意”とは
昭和時代に「天皇誕生日」だった4月29日は、昭和天皇の崩御後「みどりの日」となり、2007年に「昭和の日」と改称され、現在に至っている。 【画像】2024年の祝日一覧 内閣府のサイトによれば、昭和の日とは「激動の日々を経て、復興を遂げた昭和の時代を顧み、国の将来に思いをいたす」日だといい、昭和を知る世代にとっては誇らしい祝日なのではないだろうか。 一方で30年あまり続いた平成も、未曽有の自然災害、科学技術の飛躍的な進歩など世の中を大きく変える出来事が数多く起こった“激動の時代”だったと言えるだろう。令和となってまもなく丸5年だが、いまだ「平成の日」はない。このまま時代の流れとともに、人々の記憶から遠のいてしまうのだろうかと、寂しさを感じる“平成生まれ”も少なくないかもしれない。
すべての祝日は「法律」で決められている
2024年の「国民の祝日」は振替休日を含めて21日あるが、「昭和の日」を含むすべての祝日は「国民の祝日に関する法律(以下、祝日法)」という法律で規定されている。 1948年に成立・施行された時点では、世論調査と国会審議によって選ばれた9日が「国民の祝日」として定められ、「天皇誕生日」(当時4月29日)もそのひとつだった(※)。 ※ 天皇誕生日のほか、元日(1月1日)、成人の日(1月15日)、春分の日(春分日)、憲法記念日(5月3日)、こどもの日(5月5日)、秋分の日(秋分日)、文化の日(11月3日)、勤労感謝の日(11月23日) 1989年に昭和天皇が亡くなった後の4月29日の変遷は冒頭の通り。なお「昭和の日」はあくまで「激動の日々を経て、復興を遂げた昭和の時代を顧み、国の将来に思いをいたす」日であり、昭和天皇をしのぶ日でないことは付言しておく。
「昭和の天皇誕生日」が祝日として残されたワケ
元号が平成に変わってもなお、昭和時代に天皇誕生日だった4月29日が祝日として残されたのはなぜか。「国民の祝日」を管轄する内閣府は、その理由として、祝日法の改正について議論された衆議院内閣委員会(1989年2月10日)における小渕恵三内閣官房長官(当時)の発言を引き合いに出す。 「(略)現行の国民の祝日に、4月29日を新たに『みどりの日』として加えることとしております。 飛躍的な経済成長の結果、我が国の国民生活は、物質的にはほぼ満足し得る水準に達したものと考えられますが、これからは、これまでにも増して心の潤いやゆとりといった心の豊かさを涵養(かんよう)することが求められています。我が国は緑豊かな自然を持った国であることにかんがみ、この自然に親しむとともに、その恩恵に感謝し、豊かな、心をはぐくむことを願い、『みどりの日』として国民の祝日とするものであります。 また、この日を4月29日にするのは、この時期が新緑の季節として緑豊かな自然に親しむ上で最もふさわしい時期であり、同日が60有余年にわたり天皇誕生日であり、ゴールデンウィークのいわば始まりの休日として国民の間に定着しているからであります」 この発言の背景には、長年にわたって大型連休の初日として定着していた日を平日にすることによる、経済・社会的な影響への懸念もあったのではないだろうか。