<問題は「土用の丑の日」にあらず>減少の一途となるウナギ、消費に適正上限を
中国産ウナギの60%がアメリカウナギ
私たちの最近の調査で分かったことは、「中国産」と表示されて日本国内で販売されているウナギの約60%がアメリカウナギだということだ。2000年代に入って、ニホンウナギが減少する中、ヨーロッパウナギの輸入が増加した。しかし、07年にヨーロッパウナギがワシントン条約の付属書2に掲載されたことによって輸出が制限された。その後、徐々に増え始めたのがアメリカウナギである。東南アジア地域に生息する「ビカーラ」と呼ばれる種も注目を浴びたが、養殖における歩留まりが低かったことから、最終的にアメリカウナギの需要が高まったという経緯がある。 さらに、東アジアへ向けたアメリカウナギのシラスウナギの輸出は足元で急増している。09年~21年の輸入量は平均して30トン程度で推移してきたが、22年には157トンになった。 主な輸出先は香港で0.2トンとなっている。ハイチからの輸出量は現地の政治的状況から考えても異常であり、背景にどのような動きがあるのか調査する必要がある。 カナダでは、アメリカウナギの採捕の上限が約10トンであるにもかかわらず、22年の輸出量が30トンもオーバーしていることから、議会でも問題視され、今年は全面的に禁漁措置がとられた。カナダの放送局CBCによれば、シラスウナギの1キログラムあたりの価格は約54万円まで上昇、密漁も急増し、23年、24年にはそれぞれ100人以上の逮捕者が出ている。 また、5月にはトロントのピアソン空港で109キログラムのシラスウナギが押収され、その価値は5000万円程度と推定されると報じられた。このような、日本から遠く離れた地域で生じている社会問題に、我々のウナギの消費行動が間接的にかかわっていることを、ウナギに関わる企業・団体だけでなく、消費者も知っておく必要がある。 日本の水産庁による資源管理も少しずつ進んでいるが、十分とは言えない。水産庁と業界との距離の近さや関係性に課題がある一方で、管理していくための人的、資金的リソースが不足していることも事実だ。それを変えることができるのは政治である。だからこそ、ウナギに限らず、私たちが社会問題に関心を持ち、政治にアプローチしていくことが大切になる。(談)
海部健三