<問題は「土用の丑の日」にあらず>減少の一途となるウナギ、消費に適正上限を
一見上限が守られているようにも見えるが、解釈には注意が必要だ。池入れ量の上限は14年漁期の80%と定められたが、池入れ量の推移を見ると14年だけ約100トンと突出して高くなっている。14年が池入れ量を決める基準年となることは事前に知られており、上限を引き上げる目的で、この年に過剰な報告が行われた可能性が強く疑われる。 つまり、上限を設けているものの、全体で78.8トンという上限は実際の漁獲量に対して過剰であり、実質的に「獲り放題」に近い状況が続いていると言える。適切な上限を議論するためにも、より詳細なデータが必要となる。
シラスウナギの流通は不透明なまま
ウナギの養殖では、シラスウナギを河口や沿岸で捕獲し、養殖場で大きく育てる。最近まで、シラスウナギの捕獲は都府県知事から「特別採捕許可」を得て行われていた。多くの地域で、「特別採捕」はシラスウナギを自らの地域の養鰻業者に供給することを目的として許可されていたことから、一部地域では出荷先を限定し、採捕者が一般的な市場よりも低い価格でシラスウナギを売らざるを得ない仕組みが存在していた。 このため採捕者は、ルールに反してより高く買ってくれる「裏」や「闇」と呼ばれる非正規のルートに販売することがあった。そのような場合、シラスウナギの採捕数量が正確に報告されることはない。このほか、許可を持たないものによる密漁も大きな問題であった。 公開されているデータから計算すると、日本で養殖されるウナギのうち半分以上が、密漁または不透明な流通を経ていると推測される。 こうした状況を解消するため、昨年12月に漁業法が改正された。まずは、シラスウナギ密漁の罰金が10万円以下から3000万円以下へと300倍になり、密漁に対する抑止効果が期待される。 また、シラスウナギの採捕は「知事許可漁業」となった。この変化に合わせて、流通ルールの見直しや、採捕数量の変更などが議論された。これにより、鹿児島県や静岡県など一部の地域では、シラスウナギの販売先の制限が緩和された。 例えば鹿児島県では今年、「近年にない量のシラスウナギが捕れた」と報道された。しかし実際に漁業者や流通業者に聞くと、販売先の制限が緩和されたことによりシラスウナギの買取価格が上昇したため、これまで「裏のルート」に売っていたシラスウナギを「表のルート」に売る場合が増えたことから、報告量が増大したとの見方もある。 この他、実際にシラスウナギの量が多かった、価格が上がったためにより漁を頑張ったなど、様々な情報もあるが、漁業法改正に伴う流通ルールの見直しは、一部地域の採捕業者にとって、プラスの側面があったようだ。それは、これまでそれらの地域では「養鰻業者・シラス問屋」›「採捕者」という力関係が強く存在していた証左であろう。