羽生結弦らが能登半島復興支援チャリティー演技会を開催「笑顔の輪が広がってくれたら」
鈴木 「こうした震災が起こる度にすごく自分の無力さを感じてしまうのですが、今日こういった機会に私たちが滑ることによって何か伝えられるものがあるんじゃないかと。その気持ちをしっかりと胸に、今日はここへ来て一生懸命滑りました。このような機会をありがとうございます」
――羽生さんに質問です。プロスケーターになられて、被災地への向き合い方やできることに変化はありましたか? 羽生 「『(五輪を)2連覇したところから被災地への支援や思いやりみたいなものをスタートしたいな』という気持ちがあり、競技を頑張ってきました。やっとプロに転向し、徐々に徐々に、被災地であったり…本当にいろんな災害がありますけれども、そういったところに心をはせることができ始めています。そういった中でも、やはり自分はスケーターであることが一番なので、どうしても演技ということで。皆さんに対してのご支援であったり、感情に対してのちょっとした助けであったり、そういったものになれないかなと思って。(アイスショーの)『ノッテ(羽生結弦 notte stellata)』は3.11(東日本大震災)やその時々で起こっているいろんな災害に対して(のチャリティー)、今回は特に能登地方の震災に対してのチャリティーということでやらせていただきました」 ――明るい照明で滑る「春よ、来い」は珍しく、いつもと違った印象を受けました。どんな意図や思いがあったのでしょうか? 羽生 「まず“照明がない”という状況を考えたのは、なるべく予算を少なく、ほとんどのお金を寄付をしたいということがあって。規模を小さくすることが第一の目標としてあり、制作資金を削減していくにあたって最終的に“照明なし”ということになったわけですが、それはそれで見え方が違って、いつも見ている方々はまたいつもと違った感覚を感じていただけたのはうれしいことです。僕ら自身もやはりチャリティーということで演技での気持ちも違いました。プログラムに込める思いがより明確に能登地方の方々へ、という気持ちで滑りました」 ――フィナーレの「ケセラセラ」は羽生さんの選曲でしょうか? 羽生 「(選曲は)企画を担当してくださった方ですが、僕自身、Mrs.GREEN APPLEさんが本当に好きで。この曲自体が持っている…沖縄になってしまうかもしれませんが“『なんくるないさー』精神”というか。どんなことがあっても、自分に言い聞かせながら前を向いていくんだというような気持ちを鈴木明子さんが振り付けをしてくださって、そういう中で表現したつもりです。ボーカルもそうですし、みんな楽曲の一つ一つの音をすごく大切にしながら、希望を胸に滑ったなという感じがしています」 ――「春よ、来い」の技は、いつもよりもリンクに顔を近づけているように感じましたが、なにか意味を込めていたのでしょうか? 羽生 「ハイドロブレーディングという技なのですが、あれはそもそもこのプログラムではあのぐらい(顔をリンクに)つけるものなので、特に深い意味があるわけではないのですが、やはりこの土地…ここ自体の周辺(金沢市)はすごく大きな被害があった場所ではないですけれども、この地方としてすごく大きな被害があった、もっと大きく言えば“この周辺の地面が大きく揺れた”ということもあって、何か『静まってほしいな』という気持ちもありました」 ――能登の震災は風化が進んでいると感じますが、今日の演技会であらためて注目が集まったと思います。それは羽生さんの力が大きいと思いますがいかがでしょうか? 羽生 「僕ら…3.11のこともそうですけれども、首都圏から離れているからこそなかなか報じられることもないですし、進展があればまたニュースになったりするとは思うのですが、なかなか復興が進みにくい場所で。道路に関しても交通制限みたいなものが普通の場所よりも大きいということなので大変なんだろうなと、僕自身もニュースや実際に足を運んだ時に思いました。風化に対して僕らが何かすることはなかなか難しいのですが、それでも僕は『震災の支援をしたい』と思い、『五輪を2連覇したい』と思ったので、この2連覇、いい意味でこの知名度みたいなものを使って。今回配信のチケットを買ってくださった方々もそうですし、お金も、注目も、ちょっとでも力になれればいいなと思いました」