名スカウトの侍U18評価。清宮は不動、中村は下降、田浦は?
野球のU18ワールドカップでの侍ジャパンの戦いは、悲願の世界一はならず3位という残念な結果に終わった。今大会には、今秋ドラフトの注目選手がズラリと出場していた。木製バットを使用する大会で、しかも優勝したアメリカ、準優勝の韓国などトップクラスのチームが参加するとあって日米のスカウトがネット裏に集結。“ビッグ3”と言われていた清宮幸太郎(早実)、中村奨成(広陵)、安田尚憲(履正社)を筆頭に、プロ行きを決断しそうなドラフト候補の最終チェックに余念がなかった。 果たして、彼らの評価は、今大会で変化したのか。評価を上げた選手と、下げた選手は誰なのか。かつてヤクルトのスカウト責任者として、古田敦也、宮本慎也らを発掘した名スカウトの片岡宏雄氏に、テレビ映像で全試合をチェックしていただき、率直な意見を聞いた。 その去就が焦点となっている清宮幸太郎は、高校通算110、111号となる2本塁打を放ち6打点を残したが、打率は.219に終わり、特に前半戦は木製バットへの対応に苦しみ、本来のバッティングが崩れていた。チャンスでの凡退が目につき、痛い敗戦となったスーパーラウンドのカナダ戦では、8回二死一、三塁にチャンスに力んでボールをひっかけた。「キャプテンだけど全然打てなかった」と涙を流して大会を総括した。 片岡氏は、それでも清宮の評価は、不動だという。 「アメリカ戦では、ボールが手元で動き、ストレートは145キロ平均、最速150キロというトップクラスの投手と対戦したが、おそらく、あのレベルの投手と対峙するのは初めてだったのだろう。腰が開き、国際大会独特のストライクゾーンの見極めにも苦労していた。金属バットなら間違いなくホームランだという甘いボールも打ち損じていた。だが、木製バットに不向きかと言えば、そうではなかった。結局、木製バットには慣れるということが重用で、それを対応力と呼ぶのかもしれないが、途中から逆方向への打球を意識して持ち直すなど、慣れや対応力は見ることはできた。ホームランは、相手の投手レベルが低かったので、それ自体を評価できるものではなく、チャンスの凡退もマイナスだが、清宮の評価は変わらない。プロ表明すれば1位で重複するだろう。安田も一発はなかったが、彼が持つポテンシャルは変わらない。横浜の増田にも同じことが言える。大会前の評価通りだ」 安田は、一発こそなかったが、打率.324と、コンスタントに打った。横浜の増田珠は、スタメンチャンスも少なく打率.158と結果を残せなかったが、この2人のドラフト候補についても、片岡氏の目から見ると、それほど大きなマイナスポイントは見られなかったという。 ただ、中村は、若干評価を下げた。 打率.120で、7奪三振、ヒットは3本だけ。甲子園で、清原和博の記録を抜き大会6本塁打の最多本塁打記録を更新したが、その打棒は精彩を欠いた。 「中村は疲労が顕著だった。決勝戦まで進んだ甲子園からすぐの大会でコンディションを維持するのが難しかったのだろう。アメリカ戦でのキャッチングで指を痛めてしまったようだし、万全ではなかったと思う。バッティングも、甲子園で見せた柔らかさが消え、タイミングが狂っていた。下半身が使えず、手打ちが目立ち、バッティングのトップを作れていない。外の変化球に我慢ができずバットが出た。木製バットは芯でとらえ、ヘッドが抜けてこないと飛ばないが、今の段階では、典型的な金属バット用のバッティングに見える。繰り返すが、プロで成功するかどうかは慣れなので、今の段階で評価はできないが、何球団もが1位指名で重複するということは無理になったのかもしれない。ただキャッチャーは極論すれば、バッティング1、守備9の割合でスカウトは見る。その点では肩、キャッチング、センスはトップクラス。キャッチャーの補強が急務のチームは1位で来るだろう」