1年5カ月ぶりツアーVの錦織圭 言動の変化にあった復活への手応え「引退ちらついた」→「もっと上にいける」
男子テニスで元世界ランク4位の錦織圭(34)=ユニクロ=が今月10日まで行われたチャレンジャー大会のHPPオープン(ヘルシンキ)で、ツアー下部大会では1年5カ月ぶりとなる優勝を果たした。近年は股関節など度重なるけがで長期離脱もあり、一時は「引退もちらついた」と言動にも悲壮感が漂っていたが、復調気配を見せていた今年は変化。「もう一度トップ100に入れる。もっと上にいける」と前向きな言葉が目立った。 復活の予兆は言動にも表れていた。ここ数年、日本での大会中やイベントで取材に応じる際、錦織の発言にはどこか悲壮感が入り交じった。股関節などのけがに苦しみ、21年秋から1年以上休養が続いていた22年11月。「(落ち込んで)危ない時期はあった。1回辞める(こと)もちらついたが、フェデラーを見ていて30代後半まではできるかなと最終的には思えたので(今は大丈夫)」と告白し、周囲を驚かせた。 引退のピンチを乗り越えた翌年もエントリーとキャンセルを繰り返し、なかなか実戦復帰には至らなかったが、23年6月の下部ツアー大会で1年8カ月ぶりに復帰し、いきなり復活優勝を飾った。同年7月には左膝の痛みで再び戦線離脱。ただ、前年のような悲壮感はなく、「体が尽きるまでは(現役を)やるんだろうなという考えがあって、情熱も全然衰えない。テニスをやりたいし、試合動画を見ているだけでも楽しい。情熱がなくなって辞めることはたぶんない。辞めるとしたら、体が限界だと感じたら」と心境を語っていた。 そして、今年は健在ぶりを見せた。パリ五輪を経て、9月の国別対抗団体戦・デビス杯に8年ぶりに出場。貫禄の1勝を挙げた。さらに同月の木下グループ・ジャパン・オープンにも6年ぶりに出場すると、チリッチ、トンプソンら難敵を破って8強入りを果たし、復活を印象づけて日本のファンを歓喜させた。 言動も2年前とは打って変わり、力の抜けた“錦織節”の中にも復活への手応えがにじんだ。直近の目標もどんどん具体的となり「もう一度、トップ100に入りたい。たぶん、もうちょっとでいける」と強調。10月の取材時は「今のテニスができていれば、トップ50とか、もうちょっと上にいける。あとはもう1回、大会で優勝するとか、次の目標はそんな感じ」と語った。1年5カ月ぶりにツアーを制し、7月末には581位だった世界ランクも最新で107位まで上昇と、思い描いていた未来図に近づけた。 12月には35歳になる。日本チームとして戦ったデビス杯では「僕はあと数年で消えてしまうが、若手もどんどん上がってくる」と後輩への期待を口にしたものの、それも自虐ギャグにしか聞こえないほどプレーには往年のキレが戻ってきた。年男になる来年は、もう一度世界のトップで戦う姿ともに、コート外では肩の力が抜けた錦織節をまだまだ聞かせてほしい。(デイリースポーツ・藤川資野)