森之宮検車場で懐かしの「市電801号」特別公開。トロリーバスも/大阪
大阪市交通局が市営交通110周年を記念して、このほど森之宮検車場で保存車両特別公開イベントを開催し、家族連れや鉄道ファンらでにぎわった。イベントは午前と午後の2回開かれ、競争率3倍の抽選で選ばれた600人が参加した。
市指定文化財の市電車両などを公開
午前の部では、地下鉄森ノ宮駅から車庫線で森之宮検車場へ向かうイベント列車が運行された。参加者は普段見ることのできない車窓からの風景に大喜びだった。 公開された保存車両「市電801号車」「同2201号車」と「トロリーバス200型255号車」は、いずれもこのほど大阪市の指定文化財になった。 市電2201型は大阪市電近代化の第一弾として、1954年に11両が登場。ゴム入り車輪を用いて騒音や振動を少なくした防音車両の先駆けだった。65年、経費の削減を図るため、市電初のワンマンカーに改造。長らく市内を走り回ったのち、69年、全車が廃車となった。 2201号車には、高度経済成長期、懸命に働くビジネスパーソンが息抜きのため愛読した有力週刊誌の広告が掲示されたままになっており、懐かしい昭和の香りが漂っていた。
ハンドルを回す方向幕の操作体験も
トロリーバスは、路線の上部に張られた架線から取った電気を動力にして走るバス。大阪市営トロリーバスがお目見えしたのは53年9月。市電と比べて、建設費が安く加減速がしやすいうえ、機動性にも富んでいるため、市電に代わる新しい都市交通機関として注目を集めた。 しかし、自動車の増加に伴い、架線の制約を受けるトロリーバスが交通渋滞に巻き込まれ、定時運行を守れなくなるなどの問題が深刻化。都市交通のバトンを地下鉄に託し、市電とともにトロリーバスも姿を消した。公開された255号車は、70年6月の営業最終日まで走っていた。トロリーバス唯一の保存車両として、歴史資料的価値も高い。 保存車両の公開の他、保守用作業車の展示、ポイント転換、車両開発設計談、方向幕操作やドア開閉体験など、広い検車場内でさまざまな企画が実施され、鉄道ファンは暑さにも負けず動き回っていた。
懐かしい電車で思い出よみがえる
市交通局関連のグッズ販売コーナーもにぎわった。森之宮保存車両の車両竣工図を購入した30代男性は、「よそでは手に入らない限定販売なので、買って帰ります。きょうは子ども向けのイベントでしょうが、大人も十分楽しめました」と満足げだった。 方向幕の操作体験に夢中になっていた4歳男児と参加した30代男性は、「僕も父親に連れられて鉄道に乗りに出かけましたから、親子3代の鉄道ファンです」と話す。「鉄道の良さは人とつながっているところ。懐かしい電車と再会するだけで、よく利用した駅や待ち合わせをした人の思い出がよみがえってきます」と、鉄道の魅力を語っていた。 (文責 岡村雅之/関西ライター名鑑)